「仕事だけ人間」は部下の力を伸ばせない

「部下の人生にコミットする力」はあるか?

かつて非常にできる女性がいましてね。僕とは違う部署だったんですが、直属の上司にすごい剣幕で辞表を叩きつけて出て行ったんですよ。その女性は海外留学を強く希望していて、希望を通す実力も十分にありました。それを上司が通さなかったんです。

辞めさせるのは惜しいと思いましてね。その上司に「辞表を受け取らないでくれ」と頼みました。そして彼女の同僚に「僕に電話するように伝えて」と頼んだんです。次の日、出張先の京都に彼女から電話がかかってきたので、1時間くらい話しました。

「私は自分勝手な上司の犠牲になった、絶対許せない」と取りつく島もない。

「君はどれほど愚かなことをしようとしているのかわかっているのか。辞めてどうするんだ。せめて僕が京都から帰るまで待ってくれ」と、とにかく言い続けました。

そして帰ってから改めて、対面で話をしました。

なぜ辞表を叩きつけるに至ったのか、黙ってじっくり彼女の話を聞きましたよ。

その後で僕の考えを話しました。

「君が憎いのはその上司だろう。会社ではないはずだよ」

「上司は数年もすれば変わる。その数年のために、この会社でのキャリアを捨てるのはバカだ」

「留学留学って騒ぐが、今年ダメでも、来年行ければいいことじゃないか、冷静になりなさい」と。

最後は彼女も納得して、辞表を撤回しましたね。

その翌年、彼女はちゃんと留学に行きました。いまも僕のところに遊びに来てくれますよ。

女性の部下の話には、「男の倍」耳を傾けよ

――感情に流されて大損するところだったと気付いたわけですね。

「好き嫌いで仕事ができるか!」なんて頭ごなしに叱ったら、私も嫌われて終わりです(笑)。女性に対しては、まず聞く耳を持つことが大事なんです。

1年留学が遅れたからと怒って辞めて、次に東レよりいい企業に入るのは簡単ではありません。その後の生涯賃金が大きく減っていたかもしれない。一方で嫌いな上司とは、数年で離れられます。そこに気付けば冷静になれるでしょう。

――その上司と彼女はその後和解したのですか?

彼女はずっとその上司を許しませんでした。まあ、それは仕方ないですな(笑)。女性は一度嫌いになると、なかなか修正ができないところがある。何でこんなに人を許さないのかと思ったことはよくありました。

上司が彼女を留学に出さなかった理由は、「今行かれると困るから」だったんです。だけど、それを彼女にちゃんと話さなかった。彼女がどれほど留学したがっていたかも、行くなと言ったら嫌がることもわかっていたから、黙って留学を反故にしてしまったんです。

それは「男特有」の逃げです。どうせ結論は言わなければいけない。だったら「来年まで待ってくれ」と頭を下げればよかったんです。

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