妊婦襲うジカ熱のワクチン開発が困難な理由 情報がエボラよりも少ない
サノフィや別の企業がワクチン開発に成功したと仮定しよう。それが、妊娠する前の感染を防ぐため、ジカウイルスを媒介する蚊の生息する地域に暮らす10代の少女にのみ使用される可能性がある。
「それは優れた公衆衛生のイニシアチブだ。必ずしも商業的なイニシアチブではない。ジカ熱の流行は突然発生し、終息するだろう。よって、ワクチン接種を必要とする人が毎年大勢いるとは限らない」と、ベレンバーグ銀行のアナリスト、アリステア・キャンベル氏は指摘する。
とはいえ、WHOや他の公衆衛生当局は、世界有数の製薬会社の1つがワクチン開発に従事すると明言していることに胸をなでおろすことだろう。
結局は開発の優先度の問題
英製薬大手グラクソ・スミスクライン<GSK.L>もジカ熱について研究を進めており、同社のワクチン技術が適しているかどうかを確かめるため、実現可能性の検証についての結論を下そうとしているところだと広報担当者は2日語った。
ワクチン開発は結局、優先度の問題だと言える。それは、過去80年における開発の歴史がウイルスによってムラがあることからも明らかだ。ジカと同じ科のウイルスである黄熱病の最初のワクチンは1938年に開発された。より最近では、日本脳炎とデング熱のワクチン開発に成功している。
サノフィが開発した最初のデング熱ワクチンは昨年12月に認可されたが、開発に着手してから20年の時を経ている。
西ナイル熱やチクングンヤ熱など蚊によって媒介される他の感染症のワクチンはまだ開発途中にある。
ジカ熱の1つの対応策として、デング熱や西ナイル熱のプロトタイプワクチンを採用することが挙げられる。これらをジカウイルスの「プラットフォーム」として使うというものだが、このような方法でさえ容易ではない。
「ほとんどのウイルスには、多少なりとも効果的なワクチンを作る方法が数多く存在する。だが、最も有効なワクチンというのは、さまざまな方法でウイルスの複数の部分を標的にする」と、前述の英レディング大のウイルス学者、ニューマン氏は説明する。
複数を標的とすることで免疫システムにより多くの選択肢を与えることになり、より多くの人が免疫を作り出せることを意味する。しかしたいていの場合、ワクチンが効果的に働き過ぎて、その威力が強過ぎると、先天異常を引き起こす可能性がある。
「それは大きな懸念だ。ただ、現段階でわれわれには全く分からない」とニューマン氏は語った。
(Kate Kelland記者、Ben Hirschler記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
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