妊婦襲うジカ熱のワクチン開発が困難な理由 情報がエボラよりも少ない
それでも、米国立衛生研究所(NIH)、カナダ公衆衛生庁、ブラジルのブタンタン研究所は、ジカ熱に有効なワクチン開発に取り組んでいるほか、バイオ企業数社も開発競争に加わっている。そのなかには、米製薬大手メルク<MRK.N>と共にエボラ熱ワクチンを開発した米ニューリンク・ジェネティクス<NLNK.O>も含まれる。
そして現在、ワクチンメーカーの「大物」が開発に名乗りを上げたことは大きい。仏サノフィ<SASY.PA>は2日、ジカのワクチン開発計画を立ち上げると発表。その前日には、世界保健機関(WHO)が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であると宣言していた。
完全な認可を受けるまでに何年もかかる
カナダの研究者、ゲーリー・コビンガー氏は、試験的なジカワクチンが緊急時に限定的に使われることは、今年後半にも可能となるかもしれないが、規制当局から完全な認可を受けるまでには何年もかかるとの見方を示した。
また、英レディング大学のウイルス学者ベン・ニューマン氏は、この先に多くの困難が待ち受けているとし、「ジカワクチンが実用的であるためには、効果的で安全な必要があるが、それを両立させるのは難しい」と語った。
ある製薬会社の研究者によれば、発症しない程度に体内に抗原を入れて免疫を作るのがワクチンだが、ジカ熱に対する正しい免疫反応を評価する簡単な方法がないため、その両立は難しいのだという。
ジカ熱の症状は軽く、大半の感染者は感染していることに気づかないため、このような潜在患者は予防接種を必要としないかもしれない。
ワクチンが極めて重要となるのは、妊娠している可能性のある女性だ。ジカ熱と先天的に頭部が小さい「小頭症」との関連が指摘されているからだ。
こうしたことのすべてが、ワクチン開発と試験を非常に複雑にしている。とりわけ、新薬やワクチンの安全性が他のグループで確立されるまで、妊婦は臨床試験から除外されることが多いのもその大きな要因となっている。
また、ジカワクチンの市場が先行き不透明で限られる可能性もある。