改正薬事法の波紋、通信販売「禁止」の規制に非難が集中

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今回の検討会について、「舛添大臣の鶴の一声で始まった。厚生省職員は5年もかけて作り上げた省令案を変更したくなかったようだ」(事業者団体幹部)との声も聞かれる。一方、関係者によると無気力な事務局を尻目に、通販反対派の一部委員の間で賛成派に歩み寄る動きもあったという。だが、第6回目の直前、決定的な亀裂が生じる。三木谷氏がテレビ出演し、日本薬剤師連盟が2005年から07年にかけて14億円の政治献金を行っていた実態を明かし、医薬品のネット規制にも影響していると語ったのだ。

これを見た委員は「検討会と政治献金がいったい何の関係があるのか」と憤激。委員同士の対立は強まり、報告書もまとまらぬまま検討会は幕切れとなった。1週間のうちに1万件近く寄せられ、「通販規制をすべきでない」との意見が8割超を占めたパブリックコメントも、省令には反映されなかった。

禍根を残す措置

ドタバタの決着で割を食ったのは、漢方薬などの伝統薬だろう。通販賛成派として検討会に参加した全国伝統薬連絡協議会の綾部隆一委員が「通信販売という共通点だけで、ネット業者とひとくくりにされた」と嘆くように、議論の中に埋もれた感がある。漢方薬は第2類に分類されるが、通販による売り上げに頼る地方業者も少なくないだけに、「2年間の経過措置は延命措置にはなりえない。事業存続は厳しくなる」(綾部氏)。

検討会の開始当初から、6月以降、通販規制について別の検討会を設けて話し合う構想もあった。だが、議論が迷走する中でそれも立ち消えとなったようだ。厚労省の強引な経過措置導入は、禍根を残す結果となった。

(前田佳子 =週刊東洋経済)

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