改正薬事法の波紋、通信販売「禁止」の規制に非難が集中
わだかまりを残したまま改正薬事法が6月1日から完全施行された。
残されていた懸案は、販売業者による大衆薬の取り扱い。改正法では副作用のリスク別に3分類し、リスクの高い第1類は薬剤師、比較的リスクの高い第2類は薬剤師もしくは登録販売者の「対面販売」が原則となる。一方、購入者と顔を合わせない通信販売は、1・2類の取り扱いが原則禁止とされる(第3分類は販売が可能)。
これに対し5月25日、インターネットで医薬品を販売するケンコーコムとウェルネットは、国を相手取り東京地方裁判所に提訴。会見では「問答無用にネット販売禁止と言われるなど納得できない。営業の自由を侵害しており、違憲だ」(ケンコーコムの後藤玄利代表取締役)と主張した。健康食品や日用雑貨を扱うケンコーコムでは、売上高の7%を大衆薬が占める。このうち改正法の影響で5%程度が販売できなくなる。6月以降は省令に従う方針だが、ネット販売を規制する省令取り消しを求めていくという。
異例の検討会は混乱
46年ぶりに改正された薬事法は直前になって混乱を極めた。2月に省令を公布したが、パブリックコメントで通販の継続を求める意見が多く寄せられたため、舛添要一厚生労働大臣が改めて検討会の設置を指示。「必要があれば改正する」とまで明言した。
2月から始まった異例の検討会は、通販継続を求める楽天の三木谷浩史社長や日本オンラインドラッグ協会の後藤玄利会長(ケンコーコム)らが参加。だが、対面販売の安全性を主張する全国薬害被害者団体連絡協議会や日本チェーンドラッグストア協会などの意見と相いれず、話し合いは平行線をたどる。第5回目(全7回)には、座長が「結論をまとめるのは不可能」と、さじを投げる事態に陥った。
混沌とする中、厚労省は離島居住者など医薬品購入が難しい場合や改正前に購入していた医薬品に限り、継続購入を可能にする2年間の経過措置を編み出す。これを6月1日の施行に間に合わせるため、通常は30日以上行うパブリックコメントの応募を特例として1週間に圧縮。検討会と並行した厚労省の“突貫作業”に、三木谷氏は「結論ありきだ」と批判し、ほかの委員からも不満が続出した。