米大統領選、トランプ候補に初戦敗北の衝撃 アイオワ州の党員選挙で何が起こったのか

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全国大会に出席する代議員を選ぶために州の党大会が開かれる。予備選挙や党員集会は、州の党大会に出席する代議員を選ぶ選挙である。また、州の代議員は各選挙区に割り振られ、得票率で、各候補に割り当てられる。ただ、票が各候補者に案分されず、一位の候補者がすべての代議員を獲得する州もある。アイオワ州では得票率に基づいて案分される。

ただ、共和党と民主党では仕組みが異なる。共和党は単純に学校や消防署、市民ホールに集まった党に登録した有権者が投票して、選挙区ごとに得票率に応じて、選挙区に割り当てられた代議員が候補者に割り振られる。したがって、各候補がどれだけの票を得たかはすぐにわかる。

共和党はクルーズ候補が勝利

クルーズ候補は初戦の勝利で株をあげた(写真:AP/アフロ

これに対して民主党の仕組みは複雑で、各投票所に集まった有権者は、立候補者の演説を聞き、支持する候補者の周りに集まる。

有権者は直接投票するのではなく、選挙担当者が、それぞれの支持者の数を計算する。その際に有権者の15%の支持を得られなかった候補者は除外される。今回の場合、オマリー候補は一部の選挙区で15%以上の支持を得られず、選挙から除外されている。

こうした手続きを経るため、民主党は共和党と違って各選挙区は得票数を発表しない。発表するのは、「獲得した代議員」の数である。したがって、メディアに書かれている得票率の数字は党が発表した正式なものではない。

今回の選挙では、ヒラリー候補が獲得した代議員の数は701名、サンダース候補は697名、オマリー候補は8名で、それに基づいて先に書いた全国大会に出席する代議員の数が割り振られる。クリントン候補が29名、サンダース候補は21名、未定が2名ある。

選挙結果は大方の予想を裏切ることとなった。共和党ではクルーズ候補がトランプ候補を破り首位を獲得した。3位となったルビオ候補も、トランプ候補との得票率の差はわずか0.8ポイントまで肉薄。アメリカの開票速報では一時、トランプ候補を抜いて2位につけるのではないかと予想されることもあった。民主党ではサンダース候補の健闘が目立った。

政治専門誌「The Hill」は、アイオワ州の党員集会の勝者と敗者を分類している。共和党の最大の勝者はクルーズ候補だ。ルビオ候補も3位に留まったものの、勝者としている。敗者となったのはトランプ候補だ。「The Hill」は、「トランプ候補は全国的にも、アイオワ州においても世論調査で圧倒的な支持率を獲得してきた。しかし、最初の試験で失敗した。現在、問われているのは“トランプ現象”が本物だったのかどうかである」と書いている。

クルーズ候補が勝利した理由を知るためには、アイオワ州を理解する必要がある。人口は296万人の小さな州で、白人が93.3%を占める。最近では選挙結果を左右する勢力となっているヒスパニック系アメリカ人はわずか2.8%に過ぎない。アフリカ系アメリカ人も極めて少数である。

クルーズ候補は、地元密着型のきめ細かな選挙運動を展開しつつ、エヴァンジェリカル(福音主義派)と呼ばれる極めて保守的なキリスト教徒や、ティーパーティ派と呼ばれるグループの支持を獲得したことである。

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