米大統領選、トランプ候補に初戦敗北の衝撃 アイオワ州の党員選挙で何が起こったのか

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他方、トランプ候補の敗北は、高い支持率を背景に投票日の1週間前までアイオワ州に来ることもなく、組織化された選挙運動組織も持たなかった。さらに、取って付けたような宗教的な発言で保守的なキリスト教徒に取り入ろうとしたが、本音が見透かされて、空回りに終わったといえる。

CNNの「入り口調査」によれば、高卒以下はトランプ候補が、大学卒ではクルーズ候補、大学院卒以上ではルビオ候補と支持層が分かれている。イデオロギーで見ると、投票者の85%が保守的だと回答し、そのうち31%がクルーズ候補に投票している。宗教的には投票者のうち、64%がエヴァンジェリカルで、そのうちクルーズ候補に投票したのが33%、トランプ候補は22%、ルビオ候補は21%であった。

クルーズ候補は勝利演説の中で、「今夜はグラスルーツの人々にとっての勝利である。今夜はアイオワ州と私たちの偉大な国のいたるところにいる全ての勇敢な保守主義者にとっての勝利である」と述べている。

「The Hill」は民主党について、クリントン候補とサンダース候補のいずれも勝者としている。クリントン候補に関して「月曜日はクリントンにとって心地良い夜ではなかった。朝の2時まで最終結果が分からず、僅差でサンダース候補をリードした。では、なぜ彼女を勝者とするのか。それは敗北しなかったからだ」と書いている。

"負けない"ことで勝利したクリントン候補

アイオワ州の接戦を制した民主党のクリントン候補(写真:AP/アフロ

予備選挙は50州で行われる。サンダース候補は7月の党大会まで頑張ると主張しており、長期の戦いになることは避けられない。序盤でわずかでもリードを許せば、ヒラリー候補にとって、選挙運動が極めて苦しくなると予想されたからだ。

年齢層でみるとクリントン候補は45歳以上の層で6割以上の支持を得たが、サンダース候補は17歳~29歳で84%、30歳~44歳で58%の支持を獲得している。細かい点は省略するが、クリントン候補の支持層の特徴は、女性、高齢者、高学歴、高所得、穏健派である。所得格差の解消を訴えるサンダース候補は大学生や比較的低学歴、低所得層、リベラルの支持を得ていると分析できる。

サンダース候補は自らを民主的な社会主義者と称しており、当初は泡沫候補とみられていた。同候補が急速に支持を集めた背景には、最大の政策課題として掲げる「所得格差の解消」であり、ウォール街の金融機関幹部の批判であり、経済のグローバリゼーションの批判がある。

この主張は次第に若い世代に共感を呼び起こし、現在、選挙運動資金を献金する者は350万人に達している。サンダース候補は「平均的な政治献金額は1人あたり27ドルに過ぎない」と語っているが、これは2008年にオバマ候補が大学生など若者の熱狂的な支持を得て、大統領に当選した構図と良く似ている。

クリントン候補は2008年の予備選挙の世論調査で圧倒的にオバマ候補など他の候補をリードしていたが、アイオワ州でオバマ候補に敗北し、劣勢を挽回することはできなかった。同じ事態が繰り返されることを避けるため、クリントン陣営は早い時期からアイオワ州での組織作りと、運動を展開してきた。かろうじて、“悪夢”の再現は食い止めることができた。

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