最悪期を迎えたトヨタ、新体制で拡大路線と決別

 章男氏の大改革が始動

会社側の慎重な見通しに対しては、前期の三度に及ぶ下方修正からの教訓など、さまざまな観測が浮かぶ。もっとも、いくら予想を上回って改善しても、数千億円台の赤字は残るわけで、構造的な課題が解決したわけではない。

トヨタの生産能力は現状1000万台弱。実際の世界生産計画は630万台で、稼働率は6割台へ回復したにすぎない。雇用にしても、米英ではワークシェアリングに着手したが、国内の正社員には手を付けられないままだ。

いよいよ6月末には、豊田章男副社長が新社長に就く。渡辺社長の代まで続けてきた北米偏重・拡大一辺倒の路線は、「現場の動きとは乖離していた」(トヨタグループOB)きらいがある。結果的に、市場の変化に対し柔軟に対応できない、巨艦トヨタの弱点が露呈してしまった。新体制では真に顧客を向いた経営を実践するため、間接部門のみならず、工場や販売店の再編など、従来避けてきた聖域にまで切り込んでいこう、と考えてもおかしくない。

その章男氏は副社長以下の役員人事について、かつて渡辺社長と対立して子会社社長に追いやられたとされる人物を呼び戻すなど、異例の人事を断行している。5月初めには経営企画部内に、40代の部次長クラスで構成する、「明日のトヨタ準備室」を発足。室長には、新たに常務役員となる吉貴寛良・衣浦工場工務部長を充て、“章男チーム”として脇を固めた。自らが指揮する市場調査のマーケティング会社も来年1月に設立する。早くも自分のカラーを前面に出し、いきなりトップギアで、全速力の構えだ。

まるで現体制の否定から始めたかのような、矢継ぎ早の改革。これ以上ない最悪期からの出発だからこそ、逆に大ナタを振るう舞台が整ったともいえよう。章男氏の辣腕に社内外が注目している。

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(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

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