上原明・大正製薬社長--薬事法改正は拡大の好機、『紳商』理念で新市場開拓
--第一類の領域でNBとして新製品を生み出すということですか。
そうです。特にスイッチ薬の開発に注力しています。糖尿病やコレステロールなどメタボリック症候群にかかわる薬を開発中です。近いうちにこの領域でスイッチ薬を発売する予定です。
このような取り組みは社会的にも意義のある試みだと自負しています。現在、日本の医療費は約33兆円で、うち約10兆円がメタボ関連。この中で2割がメタボ関連の薬剤費だと考えれば、2兆円の市場規模です。高齢者の増加に伴い市場はますます拡大するでしょう。薬局で予防薬や初期の治療薬を買えるようになれば、国の医療費も削減でき、生活者の利便性も向上します。
ただ、これはメーカーの力だけでは実現できません。薬剤師がもっと発言力を持ち、生活者が自ら判断できる環境をつくる必要があります。
--薬剤師と生活者は、もっとコミュニケーションを図るべきだと。
薬剤師は本来、「地域のヘルスコンサルタント」であるべきです。OTC薬(大衆薬)はコモディティ(日用品)ですが、コモディティ以上の側面も兼ね備えています。それは、生活者が自らの症状や健康維持に関し、販売者にアドバイスを求めている点です。
価格競争に持ち込まれたら、小さな薬局はとても太刀打ちできませんが、地域住民の“かかりつけ薬局”になれるのは、街の薬局なのです。薬剤師と開業医、地域住民が一体となり、「チーム予防医療」を実現する。今回の法改正は、その絶好のチャンスだと思います。
反省を生かして長期的視点で判断
--ところで、生活者の利便性を上げ、製品の幅を広げるという意味では買収も視野に入っていますか。
これまで、コーラック(便秘薬)やビオフェルミン(整腸剤)といったブランドを買収してきました。このように、当社の商品群の中で抜けている領域で、チャンスがあれば、前向きに取り組む考えです。
--法改正で新たな販売チャネルの開拓も広がりそうですね。
駅ナカ商業施設を持つJR東日本などは大変積極的です。場所貸しではなく、新製品の共同販促まで一緒にやろうと言っています。非常に興味深く、付加価値のある提案だと思っています。高速道路のサービスエリアや病院の売店、ゴルフ場などでも販売拠点を開拓中です。