テレビパネルを軸に動き出した電機メガ再編
シャープ・東芝連合、松下・日立連合、ソニー・サムスン連合。薄型テレビ向けパネルをめぐっては世界3陣営に収斂することが必至の情勢。再編は世界規模で加速する。(『週刊東洋経済』1月12日号より)
薄型テレビ向けパネルを軸に電機メーカー再編が大きく動き出した。
まずは東芝とシャープが業務提携。2010年度をメドに東芝は薄型テレビ「レグザ」の液晶パネルのうち40%以上をシャープから調達する方向。一方のシャープは看板ブランド「アクオス」に使うシステムLSIのうち50%以上を東芝製とする。
「半導体に強い東芝と液晶に強いシャープが組めば鬼に金棒。世界的に見て最強の組み合わせ」と東芝の西田厚聰社長は得意満面だが、提携の背景にあるのは巨額投資のリスク。東芝は半導体を成長事業領域と位置づけ、3年で1兆円超の巨額投資を断行。ソニーとの間ではLSI製造の最先端設備を1300億円超の巨費を投じて買い取ることで基本合意している。同社の半導体シェアは現在世界4位。それが積極投資により、07年には3位への返り咲きが確実とみられている。
巨額投資を分担
他方、国内シェア4割を握るシャープは、3800億円を投じて大阪府堺市に液晶パネルの新工場を新設、09年度中の稼働を目指している。同社は巨大新工場の稼働率を高めるためにパイオニアと提携したばかりだが、パイオニアはプラズマテレビが主体で液晶拡大はこれから。シャープにとっては、より大口の顧客獲得が課題となっていた。
東芝の「レグザ」は国内シェアが1割に満たないなどこれまで存在感が薄かったものの、自社製LSIによる独自の“絵作り”が専門家に好評。割安な価格も受けて月間国内シェアが2割に届くなど、このところ勢いがある。
「パネルだけでも大変なのに、回路微細化が進んで半導体投資も巨額化している」(シャープのI山幹雄社長)。シャープ・東芝の連合は、それぞれの巨額投資回収をにらんだ“投資分担”ともいえる。
次に攻めに出たのは松下電器産業だ。東芝、日立製作所との液晶パネル合弁「IPSアルファテクノロジ」を子会社化するのである。東芝が保有する15%の株式を譲り受けるほか、第三者増資に応じるなどし、日立に代わって出資比率を過半に高める。
松下はプラズマテレビで世界首位の一方、このところ液晶でも想定以上の好調ぶりを見せる。IPSアルファは07年秋に32インチ換算で年産500万枚体制を構築したばかりだが、松下に対する供給は追いついていない状態。「『40インチ以上はプラズマ』との路線に変わりないが、3000億円を投じ30インチ台の液晶パネル工場を新設する」と松下の大坪文雄社長は、プラズマ同様、液晶テレビでもパネルからの一貫生産体制を築く構えだ。
また、日立の全額出資子会社で中小型液晶を製造する「日立ディスプレイズ」については、キヤノンが過半の株式を取得。そこを足掛かりに同社は携帯電話向けなどの有機ELパネルに参入する考えだ。キヤノンはテレビ事業参入の意向を持ち、かねて動向が注目される企業でもある。
これらの結果、日立は液晶製造2社の親会社から降りる形となるが、古川一夫社長は完全撤退については否定。「次世代パネルはおろか、次々世代も支えていく。今回は世界での生き残りを懸けた新連合結成。最後の一つまで生き残る力がある」と言う。
薄型テレビ用液晶パネル製造では合弁会社を設立済みのソニーと韓国サムスン電子の連合が圧倒的な存在感を誇る。両社は液晶テレビで世界首位と2位の組み合わせで、合計の世界シェアは3割を超す。この強者連合に勝つ青写真を、シャープ・東芝、松下・日立の両連合とも現段階で描けていない。どちらもさらなる合流企業の登場は歓迎の姿勢。日本発のパネル再編は、さらに海外大手に飛び火する可能性も十二分にある。
(撮影:尾形文繁)
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