マイナス金利の究極の効果は「財政救済」だ 市場を歪める政策をどこまで続けるのか

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先に述べた2013年の黒田発言を裏返すと、結局は「期待インフレ率を上げることによっては、実質金利を下げることができなくなったので、結局金利そのものを下げてしまいました」というように聞こえてしまう。

したがって、金利を下げれば再びインフレ・マインドが作られるというのは、かなり苦しいシナリオだといえるだろう。

ローンで何かを買う時、金利が低いことと商品の値段が安いことは、消費者にとって結局は同じだ。マイナス金利の自動車ローンは、自動車の実質値下げに限りなく近い。マイナス金利はデフレ脱却に効果を発するどころか、形を変えてデフレに化ける可能性を持っている。

注目を浴びる日銀に隠れて利益を得ているのは

今回の金融政策を説明するなら、そこまで苦しい弁明になる。そのように景気刺激効果が疑問だらけのマイナス金利を、なぜわざわざ導入しなければならなかったのか。

そこを詰めると、究極的には財政問題と切り離せないところがあるのでは、と考えざるを得ない。マイナス金利によってメリットを得るのは借金をしている人で、最大の借り手は日本国だ。

これまで日本の財政問題の究極の懸念は国債暴落(金利急騰)やハイパー・インフレーションだった。マイナス金利はその真逆だ。しかし、むしろ、マイナス金利は借金を返さない、ソフトな債務不履行を大々的に認めてしまうことでもある。

貸し手に「少しずつなら構わないでしょう」とばかりに、長期にわたって負荷をかける。そのような多くの貸し手によって支えられている経済に活力が芽生えるとは、とても考えにくい。結果的に日本経済が衰弱死に向かう懸念を抱かざるを得ない。

マイナス金利政策が発表され、今、日銀だけに焦点が集まっている。それに隠れて国は、とてつもなく膨張した債務を、誰からも批判を浴びずに削減することに成功しつつあるように見える。それはハイパー・インフレーションよりも怖いことだ。

徳勝 礼子 BNPパリバ証券投資調査部レラティブ・バリュー・アナリスト

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とくかつ れいこ / Reiko Tokukatsu

1986年東京大学経済学部卒、1991年米シカゴ大学MBA(統計)。英モルガン・グレンフェル(現ドイツ証券)をはじめとしてソロモン・ブラザーズ・アジア証券(現シティグループ証券)、ドイツ証券などに勤務し、マーケット業務にリサーチ側から従事。途中2005~07年はバークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック)においてポートフォリオ・マネージャーも務めた。2014年から現職。CFA協会認定証券アナリスト。

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