活気づく太陽光発電、相次ぐ公的補助が後押し
国内の住宅用太陽電池の市場が、にわかに活気づいてきた。国内大手メーカーである京セラ、三洋電機は足元の販売が前年比5割近く増え、最大手のシャープも大きく販売を伸ばしている。2009年度の新規設置件数は、過去最大だった05年度の7・2万件を上回るのが確実視されており、「状況次第で10万件の大台もありうる」(三洋ソーラーエナジーシステムの亀田正弘社長)との予測も出始めている。
背景にあるのは、太陽光発電の公的な普及促進制度だ。昨年の「福田ビジョン」で低炭素社会への転換を提唱した政府は、06年にいったん廃止した住宅用太陽電池の補助金制度を今年1月に再開。一般家庭が新規に太陽光発電システムを設置する際、最大出力1kW(キロワット)当たり7万円を援助する。補助金の審査窓口であるJ‐PEC(太陽光発電普及拡大センター)によると、1月中旬の受け付け開始から3月末までの申請件数は2・2万件に上り、3カ月弱で07年度の新規設置件数(4・9万件)の半分近くに達した。
さらに4月からは東京都や埼玉、神奈川県などの都道府県が独自の補助金制度を開始。中でも東京都は09年度から2年間で総額90億円の予算を組み、支給額も1kW当たり10万円と国以上に手厚い。市町村単位でも太陽光発電普及に向けた補助金制度導入が全国で相次いでいる。
戸建て住宅で太陽光発電システムを導入する場合、平均的な設置容量は3~3・5kWで、200万~250万円の費用がかかる。こうした初期費用の重さが普及のネックだったが、各種の補助金制度を活用すれば、導入時の経済負担は軽くなる。支給額の大きな都内では、国や都、市町村の補助金で初期費用の3割以上を賄えるケースも出始めた。
営業の現場でも変化が起きている。関東首都圏を中心に100件以上の設置実績を持つ販売代理店、大三洋行は、「説明会に足を運んでくれるお客さんが目に見えて増えた。最近は過去に設置を見送ったお客さんから、改めて見積もりの依頼を受けることも多い」(辻井勝・太陽光システム事業部専任部長)という。
住宅業界の戦略も普及を後押しする。積水ハウスは、新築・建て替えの顧客を対象に太陽光発電システムの割引制度を5月から導入し、今年度は同システム搭載住宅の販売を3倍の6000戸に増やす計画。不況で強烈な逆風が続く住宅業界は、需要喚起のため、太陽光発電とオール電化を組み合わせた「省エネ住宅」を大々的に訴求。大和ハウス工業は今年度に搭載住宅の販売構成比を30%へ倍増、パナホームに至っては50%前後に引き上げる計画だ。