活気づく太陽光発電、相次ぐ公的補助が後押し
高額買い取り制度を導入 社会的負担増の課題も
近年、日本の太陽電池メーカーの主戦場はもっぱら欧州だった。おひざ元の国内市場は、国が住宅用の補助金をやめた06年から需要が縮小。国内生産量の大半を欧州向けの輸出に回す状況が続いた。ところが、その欧州市場は金融危機の影響で昨年後半から状況が一変。需要を牽引してきた大型太陽光発電プロジェクトの延期・中止が相次ぎ、急激な需要縮小と価格下落に見舞われている。
そうしたタイミングでにわかに動き始めた国内市場。日本メーカーにとっては願ってもない絶好の商機で、各社は一斉に国内での販売強化に動いている。シャープは、新しい設計方式を採用した太陽電池パネルを4月に発売。屋根の形状や面積に応じて効率よく設置できるのが特徴で、「設置面積が限られる都内の住宅などで需要を取り込む」(販売を担当するシャープアメニティシステムの日吉孝蔵社長)。京セラは国内販売網の拡充を進め、フランチャイズ方式で展開する工務店などの専門特約店を、現在の全国62店から2年で100店舗へ増やす計画だ。
太陽光発電普及に向けた政策は補助金にとどまらない。住宅用の補助金再開に続き、国は来年から太陽光発電の高額買い取り制度を新たに導入する計画だ。同制度は、太陽光発電による余剰電力分を電力会社に高く買い取らせるもの。すでに欧州では大半の国が同様の制度を導入。その先駆けとなったドイツは高額買い取りが起爆剤となり、太陽光発電の累積導入量で世界最大国になった。
現在でも国内電力会社は余剰電力を買い取っているが、あくまで義務ではなく、買い取り価格も家庭用電力料金と同等。国は新制度で買い取り単価を現在の倍に引き上げ、10年程度に及ぶ高額買い取り義務を電力会社に課す。太陽光発電を導入した家庭はより短い期間で初期費用が回収できるようになり、国内需要が急拡大するのは確実だ。
もっとも、喜んでばかりもいられない。太陽光発電はまだ発電コストが割高で、今回のような政策的な後押しなしには普及が進まない。しかし補助金の原資は税金で、電力会社による高額買い取りのコストは一般電気料金に転嫁される。今後、そうした社会的負担が右肩上がりに膨らみ続ければ、国民から反発の声も出るだろう。早期に技術革新や量産効果によってコストを大幅に下げ、支援策に頼らない自立した産業へと脱皮できるか。太陽電池メーカー各社は重い責務を背負っている。