大阪・不動産市況-キタもミナミも続々竣工、“不運”の再開発ラッシュ《不動産危機》
新大阪駅から徒歩数分、日本生命などの高層ビルが立ち並ぶ一角に、大阪市内の不動産市況悪化を物語るビルがある。三菱地所系のファンドが開発した「新大阪フロントビル」だ。ビルのウインドーには「テナント募集」の大きな広告。2008年11月に竣工したが、いまだテナントはゼロだ。不動産業界関係者も「どうなっているのだろう」と首をかしげる。
このビルから徒歩4~5分に位置する「新大阪テラサキ第3ビル」も、完成から1年近く経つが、看板を見ると7階建てのオフィスのうち6、7階はまったくの空き状態。
「キタ」と並ぶ大阪の中心街「ミナミ」の心斎橋駅から徒歩圏、長堀通りとなにわ筋が交差する、地下鉄西大橋駅真上に建つ「四つ橋グランスクエア」も不動産市況悪化の生け贄の一つだ。1、2階のアウディのショールームは目立つが、その階上11階までのオフィス部分は5~8階と11階が埋まっていない。
不動産仲介大手・三鬼商事の大阪支店がまとめた市内主要ビジネス地区のオフィスの平均空室率は、07年10月の4・38%を底に直近09年2月末7・46%へと16カ月連続で上昇。リーマンショック直後の昨年10月末に6%台に乗せた後は上昇速度が加速している。特に竣工から1年未満の新築ビルの空室率は直近の2月末で20・67%。昨年10月末の13・83%から11月末に20・81%に急上昇した後は、高水準が続く。既存ビルでも空室率がジリジリと上がり続けている。
サブプライムショックに伴う景気の急悪化と新規ビル竣工増--。大阪市内のオフィスビル市場にも、需要と供給両面での悪化要因が重なって押し寄せている。
「09年中には市内の平均空室率は10%台に乗せるかもしれない」。三鬼商事大阪支店の小畑大太(だいた)次長は警告する。景気後退で「すでに工場内に事務所を戻したり、安い事務所に移転するといった動きがある」(小畑氏)。平均空室率10%乗せとなれば、10階建てビルでも1フロア分のテナントが空いているのが外からもわかり、賃料下げ要求も強まる。02年、03年の大底水準の状況に逆戻りだ。表に出る募集賃料、実際に契約する成立賃料も完全に下げ足を強めている。ここに未曾有の大型新築ビルのラッシュという大阪固有の要因が、今年から本格的に加わる。
大阪ビルディング協会が昨年末から今年1月にかけて会員各社に今後6カ月の予想を聞くと、空室率上昇の予想が1万平方メートル以上の大型ビルで74%を占め、募集賃料の下降予想も75%に達するなど、先行きへの警戒感が鮮明に表れている。