戸建ては連休後に「買い場」到来? 在庫処分ほぼ一巡だが供給圧力残る《不動産危機》
それでも、野村不動産は値下げ販売には否定的だ。「最初はパワービルダーと当社の物件を一緒に見て回っていても、最後まで迷うお客様はほとんどない。同じような建物がずらっと並んでいるパワービルダーの物件に飽き足りないお客様が当社にシフトしてくる。パワービルダーの価格に近づけるつもりはない」。同社住宅カンパニー住宅販売部副部長の石松征一氏はそう断言する。
実際に、野村不動産が多摩地区のすぐ北側にある埼玉・新座市で昨年11月に売り出した戸建て40戸は、売り出し時期がリーマンショック後だったにもかかわらず、値引きなしですでに完売。駅から徒歩10分の好立地に加え、1戸当たりの土地面積40坪、建物面積31~35坪と周辺物件より広く、販売価格も5500万~6000万円とやはり高めだ。「価格が最重要ポイントではない。植栽する木の一本一本の位置にまでこだわった街づくりや、1戸ごとに違いを出した外観や間取り、周辺物件に比べて広めの面積などが認められて買われている」と石松氏は強調する。
下落率が2割超えれば65%の人が「購入する」
首都圏では1~2月には新聞にどっさり折り込まれていた不動産チラシが、3月にかけて漸減。新築戸建ての在庫処分セールもひとまず一巡した感がある。ただ、供給圧力がなくなったわけではない。
リクルート『住宅情報ナビ』編集長の西村里香氏は、「土地のまま置いている売り主が多い。売れてきたら建てればよいし、建築条件付き土地にして買い手が見つかってから建ててもよい」と説明する。西村氏によれば、大手デベロッパーの中には、戸建て用に土地を仕込む動きさえ昨年後半から出てきているという。
戸建て志向の買い手にとっては、今が買い時か、待ったほうがよいのか。西村氏は買い手側の心理をこう分析する。「週刊誌などで住宅が底値にあるという記事が相次ぎ、実際に見に行っても値段交渉がしやすい物件が増えた。当社で3カ月に1回行う意識調査を見ても、今が“買い時”と考える人が増えている」。