再論・「政府紙幣発行論」批判--政府紙幣の発行益は一時的、短期間で消える

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再論・「政府紙幣発行論」批判--政府紙幣の発行益は一時的、短期間で消える

筆者は、週刊東洋経済2月21日号で政府紙幣発行論について論じた(→こちら)が、その結論は、「政府紙幣は本質的に無利子・無期限の国債であり、政府が紙幣発行によって得る通貨発行益は、将来の歳入となるべき日本銀行の将来利益を先取りしたものにすぎない」というものだった。

この際、政府紙幣の発行方式として「日本銀行が政府紙幣をすべて保有し、市中には流通させない」というスキームを前提に話を進めた。

ところがこれに対し、田中秀臣上武大学教授から「二種類の紙幣が流通しても問題はないと考える。額面の工夫、デザインの工夫、さらには材質の工夫でもいいだろう。そうすると福永論説の(僕にはよく理解できない)日本銀行を経由する必要はなくなる」(同氏の2月15日付ブログ)という批判をいただいた。

そこで今回は、政府紙幣を日銀券と同様に市中に流通させた場合にどういうことになるか考えてみたい。

日銀に還流した際の問題

以前触れたように、政府紙幣を市中に流通させる発行方式もまた2種類ありうる。

第一は、政府貨幣(硬貨)の場合と同様、政府紙幣を日銀の窓口を経由して国民に流す方法。

第二は、日銀を経由せずに直接市中に流す方法。この場合は、政府からの支払いの一部(国債の償還や国家公務員給与の支払いなど)を政府紙幣で行う。あるいはかつての地域振興券のように、直接国民に配ることも考えられる。

この二つのいずれかにより、政府紙幣が市中に流通すると、預金やローンの返済などによって政府紙幣が市中銀行に流れ込んでくる。市中銀行は、手元に必要な以上の現金は日銀当座預金口座に預金するから、政府紙幣が日銀に流入(日銀経由で発行した場合は「還流」)する。このようにして日銀に入ってきた政府紙幣の扱いが問題となる。

というのは、政府紙幣は日銀にとって運用益を生まない資産であり、日銀は当然保有したくないからだ。そこで日銀は、流入してきた政府紙幣を再び窓口から市中に流すか、政府に回収を要求することになる。

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