増え続ける使用済燃料、再処理工場稼働の課題
電力各社が新たな経営計画を発表する中、九州電力の経営方針で、他社には見られない項目が明記された。それは原子力発電に伴う使用済燃料で「中間貯蔵施設の設置に向けた調査・検討」を行うというものだ。
原発の燃料であるウランがほとんど取れない日本では、使用済燃料を再処理し、抽出したプルトニウムを再び燃料に使う「核燃料サイクル」を推し進めている。国内原発全体で排出する使用済燃料は年間約1000トン。現在、その一部を日本原燃(本社・青森)が再処理用の燃料として受け入れ、残りは各原発で貯蔵している。
九州電力では従前から、使用済燃料の受け入れが順調に進まない場合、2013年頃に発電所での保管容量が満杯になるとの見方を示していた。すでに東京電力と日本原子力発電は共同出資で中間貯蔵会社を設立し、12年の操業を予定している。余力確保のため、九電もこれに倣う形だ。
一方、核燃サイクルの中核ともいうべき日本原燃の再処理工場は、最終試験段階でトラブルが相次ぎ、何度も竣工を延期してきた経緯がある。当初は03年の予定だったが、1月に13度目となる工事計画の変更を発表。昨年5月に公表した計画では、再処理工場の稼働を前提に、09年度の使用済燃料の受け入れ計画を711トンとしていた。だが稼働が遅れることで、その量は331トンにとどまる。再処理が進まなければ、おのずと電力会社側の貯蔵負担が増す。
電気事業連合会によると、昨年9月時点で国内原発全体の管理容量は1万9240トン、対して貯蔵量1万2320トンと使用率は6割強。一方で日本原燃は、受け入れ容量(3000トン)の8割強を使っており、電力会社よりも余力が乏しい。工場稼働にこぎ着けても、日本原燃が処理できる使用済燃料は年間800トンで、電力会社の年間排出量を約200トン下回る。貯蔵余力は電力各社で異なるが、増え続ける使用済燃料の貯蔵確保にどう対応していくか。これは業界全体の課題でもある。
日本原燃の再処理工場は今年8月の竣工を予定する。しかし5月に計画する最終試験再開について、児島伊佐美社長は3月30日の会見で「厳しい」と述べた。延期を繰り返すと、使用済燃料の貯蔵問題はさらに重みを増す。
(井下健悟 =週刊東洋経済)
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