「住商ショック」再び?総合商社が恐れる悪夢 アフリカのニッケル生産で巨額減損を計上

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アンバトビー・プロジェクトのニッケル精錬所

住友商事は「資源の撤退は考えていない」(猪原弘之副社長)とし、今後もアンバトビーの事業を継続する方針を示している。

ただ、今回770億円を減損処理しても、住友商事持ち分のアンバトビー残存簿価はまだ約17億ドル(約2000億円)残っており、悪材料が出し尽くしたとはいいきれない。

今回、2019~2020年のニッケル価格の前提を従来の10~11ドルから8.5ドルに引き下げたが、ニッケル市況がもう一段下落すれば、さらなる見直しも現実味を帯びてくる。再度の減損を回避するため、一段の操業コストの削減が急務となっている。

住友商事は現在、アンバトビー以外の主要資源案件でも減損テストを実施している。精査中のため具体的な案件は示していないが、同じく市況下落が痛手となっているブラジル鉄鉱石のMUSAで減損懸念がくすぶっている。2013年に買収した米国の大手鋼管問屋エジェングループも、主力の北米シェール向け需要が減少しており、候補の1つに挙がるかもしれない。

脳裏をかすめる悪夢の再来

会社側は、2月5日の第3四半期決算と同時に、通期の業績見通しを公表するとしている。非資源事業を中心に基礎収益(一過性損益の影響を除いた収益力)は通期で2100億円を維持するという計画は変えておらず、配当については中期経営計画で下限としている通期50円を堅持する方針だ。

中国経済の減速を主因に、原油価格がWTIで一時1バレル=30ドルを割り込んだほか、石炭、鉄鉱石、銅などの金属価格も底値が見えていない。資源案件の将来収益計画の見直しに伴う大なり小なりの減損計上は、同業各社も避けられない情勢だ。

ある総合商社幹部は顔をしかめながら、「一昨年の住商ショックを嫌が応でも思い出す」と漏らす。2014年9月に住友商事が北米のシェール案件などで巨額の減損を計上したのを皮切りに、ほかの総合商社が次々と資源案件での減損を強いられた記憶が、鮮明に残っているからだ。 「第2の住商ショック」となるか、業界関係者は固唾をのんで見守っている。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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