「四季島」vs「ななつ星」、デザイナー対決の深層 豪華寝台列車に垣間見る、職人たちの矜恃

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近畿車輛はドバイに続き、カタールの首都ドーハを走る都市鉄道「ドーハメトロ」の車両製造も受注。再び世界が驚く列車を送り出すため、南井氏は奮闘の日々を続けている。

各鉄道車両メーカーは社内に南井氏のような車両デザイナーを抱えている。通勤列車から特急列車まで、数多くの列車のデザインは彼らの手によって生まれる。だが、その存在がクローズアップされる機会は決して多くない。

車両メーカーからスターは出てくるか

多くの車両デザインを手掛けてきた木村一男氏(撮影:梅谷秀司)

「大手自動車会社なら、数百人のデザイナーがいる。鉄道車両メーカーのデザイン部門にも、もっとパワーが欲しい」

そう語るのは、国鉄時代の新幹線「200系」を皮切りに九州新幹線「さくら」「みずほ」に至るまで、多くの車両にかかわってきた、名古屋学芸大学メディア造形学部の木村一男・学部長だ。

人数だけではない。自動車業界では、新車発表の際にデザイナーや開発担当者がメディアの前に登場し、新車のデザインやコンセプトを説明することが多い。鉄道車両の場合、その役目は車両を発注した鉄道会社か、水戸岡氏や奥山氏のような外部デザイナーが担う。車両メーカーのデザイナーが表舞台に立つ例はほとんどない。

「最近人気の水戸岡氏や奥山氏のようなデザイナーをどう思うか」という質問を木村氏にぶつけてみたところ、「鉄道車両メーカーからもスターが出てきてほしい」との答えが返ってきた。「デザイナーの名前が出れば、責任感も大きくなる」からだ。「インハウス・デザイナーにもっと日の目が当たってほしい」というのが木村氏の願いである。

自動車業界では、モーターショーなどのイベント時に各社の自動車デザイナーたちが一同に介し、夜更けまで語り合うという。鉄道デザイナーの集まりは今回が初めて。遅まきながら、鉄道デザイナーたちもようやく第一歩を踏み出した。

会場には、木村氏のようなベテランからデザイナーの卵まで、多くの人が集まった。「私もいつかすごい車両をデザインしたい」。今年、鉄道車両メーカーに就職したという新人デザイナーは目を輝かせる。

今は「水戸岡デザイン」「奥山デザイン」といった社外デザイナーばかりが注目を集めているが、10年後には社内デザイナーの名で新型車両が語られる日がくるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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