「四季島」vs「ななつ星」、デザイナー対決の深層 豪華寝台列車に垣間見る、職人たちの矜恃

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「ななつ星」のデザイナーである水戸岡氏(撮影:梅谷秀司)

与えられた条件の下で注文主の要望を「商品」という形に落とし込むのが、商業デザイナーの宿命。だが、その条件下で最高のものを作り上げたいと考えるのは、デザイナーという職業の性(さが)でもある。

水戸岡氏に対する奥山氏の対抗意識は、多少大げさにいえば、デザイナーとしての生き方に起因するものなのだろう。

観光列車以外にも視野を広げれば、著名デザイナーが鉄道車両を手掛けたケースは意外と多い。

ファッションデザイナーの山本寛斎氏は、京成電鉄の空港アクセス特急「スカイライナー」のデザインを担当した。「車両がでしゃばってはいけない」というのが山本氏のコンセプト。旅行者やビジネスマンなどさまざまな人が利用することを考慮して、色を控え目にし、凛として気品のある列車に仕上げた。

新国立競技場の設計に参加した建築家の隈研吾氏は現在、西武鉄道が4月に運行開始する観光列車の内装デザインを手掛けている。隈氏は木材を効果的に使った建築で知られる。新国立競技場もスタジアム全体を木材で覆い、周囲に溶け込むようなデザインだ。4月には、水戸岡デザインとはひと味違った車両がお目見えしそうだ。

大半の車両は無名デザイナーが手掛けている

山本寛斎氏がデザインした「スカイライナー」

とはいえ、鉄道車両のデザインは著名デザイナーだけに限られたものではない。むしろ大半の車両は、普段は名前も明かされない鉄道車両メーカーの社内デザイナーが手掛けている。

昨年11月12日に幕張メッセで開催された「鉄道技術展」で、ユニークなイベントが開催された。「レイルウェイデザイナーズイブニング2015」。文字どおり、鉄道分野で働くデザイナーたちの集まりだ。

「ひと言で鉄道といっても、車両の内装、外観、駅舎など、ジャンルは多岐にわたる。さまざまな分野のデザイナーが集結することで、お互いの領域を超えた情報交換をしてもらいたい」(実行委員を務める近畿車輛の南井健治取締役)

南井氏は、アラブ首長国連邦・ドバイの都市鉄道「ドバイメトロ」のデザイナーとして世界的に知られた人物だ。「世界一美しい電車を作れ」という厳しい要求の下、ドバイの高層ビルから列車を見下ろすことも考慮して、車両の屋根のデザインにもこだわった。

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