高齢時の認知力は20歳時の文章から分かる?!

アルツハイマー病の過去・現在・未来

アルツハイマーは極めてすぐれた医師、いや、医学者であった。アウグステ・Dの脳組織の顕微鏡的な観察から、脳の神経細胞が減少していることと共に、プラークという沈着物が細胞外に存在すること、神経細胞内にタングル(神経原繊維変化)という異常が認められること、を記載している。そしてこの2つは、アルツハイマー病の特徴であるとともに、その原因であると考えられている病変なのだ。

両者の蓄積は、ある意味では、老化の過程そのものだ。30代から40代にかけて、すべての人において、ある程度のプラークとタングルが蓄積し始める。しかし、必ずしも、アルツハイマー病を発症するレベルに達する訳ではない。このように、何十年にもおよぶ過程の結果としてもたらされる疾患であることが、アルツハイマー病を理解する難しさのひとつである。

その主因はいまだ結論が得られていない

プラークもタングルも、アルツハイマー病に密接に関係していることは間違いない。しかし、いずれが主因であるのかは、膨大な数の論文が発表されているにもかかわらず、まだ結論が得られていない。遺伝性のアルツハイマー病ではまずプラークの元となるアミロイドの蓄積から始まるとか、タングルの認められないアルツハイマー病があると聞くと、プラークが原因であると考えたくなる。しかし、一方で、タングルの蓄積が認知症の程度に相関する、と聞くと、タングルが重要かという気がしてしまう。

一般的には、『アミロイド・カスケード仮説』-アミロイドの蓄積によるプラークの形成が閾値を超えるとカスケード(滝)のように脳の損傷が引き起こされるという考え-が有力だが、この、プラークとタングルのどちらがより重要か、というのは、単なる学問的な興味にとどまらない。

なぜなら、アルツハイマー病の治療のターゲットをどちらにすべきか、という大問題につながるからだ。アルツハイマー病の発症を完全に防げなくとも、たとえば10年遅らせることができれば、高齢社会における介護などの負担額を劇的に減少させることができるはずなので、その治療法の開発は極めて重要な課題なのである。

アミロイドのタンパクを「ワクチン」として投与して免疫反応を引き起こし、アミロイドからできているプラークを消失させてみよう、という試験的な治療が行われた。いいニュースは、何人かでプラークの減少あるいは消失が認められたこと。悪いニュースは、そのような反応を示した人であっても認知症が改善しなかったこと、そして、さらに悪いニュースは、6%の被験者において脳炎が認められたことだ。現在、より早期の患者に対して、アミロイドに対する抗体投与というより安全な方法で、プラークの形成を抑制し、アルツハイマー病の進行を抑制できるかという治験が行われている。

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