「阪神なんば線」が開通、地域住民の期待、自治体の思惑、鉄道会社の目論見を乗せて--《NEWS@もっと!関西》
神戸と奈良を直結する「阪神なんば線」が20日、開業した。関西方面では連日のようにテレビや新聞、雑誌などで関連特集が報道されており、新線に対する地域住民の期待の高さが伺える。
「祝!開通」--。開業に先立ち19日に催された開通式は、平松邦夫・大阪市長らによるテープカットが華やかに行われた。阪神電気鉄道が運営する阪神なんば線は、既存の尼崎~西九条を大阪難波(近鉄難波から改称)まで延伸したもの。開通に伴い九条、ドーム前、桜川の3駅が新設された。近畿日本鉄道との相互直通運転も開始され、これにより兵庫県の三宮から大阪府の大阪難波を通って奈良県の近鉄奈良まで快速急行が最速76分で運行することになる。総事業費は900億円。
神戸と奈良はこれまで、同じ関西圏にありながら「心理的に距離感がある」とされてきた。直通する鉄道がなかったために、相互の行き来が不便極まりなかった。たとえば、奈良市の住民が阪神甲子園球場に出向く際は、近鉄大阪線「鶴橋」駅→JR西日本環状線「梅田」駅→阪神本線「甲子園」駅と複数の乗り換えが必要だった(一般的なルート)。神戸の住民も「奈良には遠足で行ったぐらいかなあ」(30代男性)との声が少なくない。
阪神電鉄と近鉄にとって、新線開通の効果は大きい。関西圏の少子高齢化が進む中、近鉄は輸送人員が年々減少傾向にある。阪神電鉄との直通運転の開始で、神戸から京都に流れる傾向にあった観光客を呼び込む狙いだ。「神戸から乗り換えなしで奈良に来れるので、近く感じていただける。観光客だけでなく、通勤客なども呼び込みたい」(近鉄)。同社は初年度5億~10億円の増収効果と見ているようだ。阪神電鉄は沿線開発や阪神タイガースの活躍が後押しし、輸送人員が比較的安定している。これを新線効果により確実に伸ばす狙い。阪神電鉄は一日あたり6万7千人の利用客、初年度30億円の増収効果を見込む。
鉄道会社だけではない。新線開通は地域経済へも影響を及ぼす。神戸側は甲子園球場の改装がほぼ完了したことや、阪神タイガースに真弓新監督が誕生したことが相乗効果となりそう。職業体験型テーマパーク「キッザニア甲子園」が27日に開業することも追い風だ。景気悪化をのぞけば、新線開業は絶好のタイミングと言える。神戸空港の利用客アップにつながる可能性もある。