日本は2020年後半再び大きなリスクに直面する 「同調圧力」でコロナ感染を抑えた日本の限界

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先に述べたが、公衆衛生政策を徹底するための、緊急事態宣言による経済活動の自粛はやむを得なかった。ただ、日本で行われた経済・社会活動に対する制限は、他国と比べると非常に緩やかだった特徴がある。

英オックスフォード大学が、学校・職場・店舗・公共施設・交通機関などの利用制限状況をもとに「社会距離厳格指数」を各国別に推計している。それによると、日本の社会距離厳格指数はピークだった5月前半でも53.3と、ほとんどの国が70~90まで高まったことと比べるとかなり低い。この指数だけで厳密な比較は難しいかもしれない。ただ、4月からの緊急事態宣言によってわれわれの日常の行動や経済活動はかなり抑制されたとはいえ、他国対比では政府による制限そのものはかなり緩かったと位置付けることができる。

日本での行動制限が他国よりも緩かった一因は、まずは日本でのウイルス感染の広がりが当初は極めて遅かったことである。そして、感染拡大が緩やかに進んだ結果、日本の人口あたりの死者の数をみると、米欧諸国対比では2ケタ小さく、韓国、シンガポール、オーストラリアなど他のアジア先進国とほぼ同様となっている。なお、韓国などアジア諸国の社会距離厳格指数は、日本よりも総じて高かった。このことは、安倍政権の対応は、感染被害と経済的被害のバランスをうまくとっていたことを示している。

今後も日本人の行動は慎重姿勢が持続か

また、日本と同程度の社会距離厳格指数の先進国は、集団免疫戦略を採用しているスウェーデンである。同国の人口当たりの死者数は、イタリアなど他の欧州諸国と同程度である。そして、日本よりも社会距離厳格指数が低いのは台湾で、感染被害そして経済活動制限いずれも小さかった。

一方、日本では法的な活動制限は相対的には緩かったが、それでも緊急事態宣言が発動された4~6月の経済活動の落ち込みは、米欧諸国と同程度に大きくなると筆者は試算している。法律に基づく罰則などが限定的で緩い行動制限でしかないのだが、「奇妙な同調圧力」によって他国同様の経済活動自粛が実現した、と推測する。すでに一部で論評が出ているが、諸外国から見れば「日本はとても不思議な国」と、改めて認識されるのではないだろうか。

それでは、緊急事態宣言解除後の日本経済をどう見れば良いか。緊急事態宣言が解除されても、感染リスクに対するわれわれ日本人の行動は、他国と比べてかなり慎重なままだろうと筆者は予想している。

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