新型肺炎がもたらす「最悪のシナリオ」とは何か FRBの金融緩和策の行きつく先に起こる事態

拡大
縮小

とはいえ、この先COVID-19の感染拡大によって、世界経済が疲弊するのが不可避の状況であることに変わりはなく、アメリカも少なからぬ影響を受けることになるだろう。具体的な数字となってそれが表れてくるのは、2月分の経済指標が発表されるようになる今月末から3月にかけて、だ。指標に弱気内容が相次げば、アメリカ株も今のような快進撃を続けることは難しくなるのではないか。

世界的な景気減速に対する市場の不安が高まり、投資家の間にリスク回避の動きが本格的に出てくるようになれば、それまでに大きく買い進まれていたものの、割高のものが真っ先に売りを浴びることになる。3月から4月にかけてのいずれかの時点で、かなりの価格調整が見られる可能性は高いと考えておくべきだ。その際は5%程度の調整にとどまれば良いが、景気の落ち込みが思った以上に大きなものとなれば調整も10%を超え、昨年10月の安値を試すあたりまで値を下げることも十分にあり得ると思われる。

株価が調整しても、意外に早く回復する?

こうした一連の景気の減速は、COVIT-19への感染そのものによって、あるいは感染の拡大を防止するためにヒトやモノの移動を制限したことによる、需要の落ち込みによるものだ。

だが、これは意外に早く回復してくる可能性も高いと考えられる。世界各国が厳しく対策を進めていることが、一時的な需要の落ち込みにつながっていることは間違いないが、その成果が出てくれば感染拡大も徐々に収束に向かうことになるだろう。仮に感染の連鎖を効果的に食い止めることが出来ず、世界中に拡散するパンデミックの状態に陥ったとしても、逆説的ではあるがヒトやモノの移動の制限も意味がなくなるため、解除されていくことになる。

また景気の先行き不透明感が強まり株価の調整が進めば、FRBが追加利下げに踏み切ることも十分にあり得る。3月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でいきなり政策変更というのは考えにくいが、金利据え置きに失望する形で株価の調整が一段と進むようなことがあれば、4月28~29日の会合で利下げを打ち出す可能性は、逆に高まると見て良いだろう。市場がどの時点で追加利下げを本格的に織り込むようになるのかはまだ何ともいえないが、4月に入ったあたりからそうした期待が高まり、株価が回復してくることも十分に考えられよう。

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