「最低賃金1178円」が国際的に見た常識的な水準だ コロナを「言い訳」にしてはならない4つの理由

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日本の最低賃金を、最低でも国際的に見て常識的な水準まで引き上げるべきだといいます(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。
今回は、「国際的に見た常識的な最低賃金の水準」と、「コロナ禍を言い訳にして最低賃金を据え置いてはならない理由」を説明してもらう。

国際的に最低賃金の水準は収斂している

最低賃金をめぐる議論がヒートアップしています。

中小企業経営者の利益を代表する日本商工会議所は据え置きを主張しているのに対して、全国労働組合総連合は全国一律に1500円までの引き上げを訴えています。

分析の面白いところは、分析を深めるほどに、毎日のように新しい発見があることにあります。今回もある発見をしたので、紹介します。

実は、先進国の最低賃金は一定の水準に収斂していることがわかりました。OECDのデータによると、日本を除く大手先進国の購買力調整済み最低賃金は平均11.4ドルです。2001年では、最も高い国の最低賃金は最も低い先進国の3.6倍もありましたが、2020年では1.6倍まで近づいています。

生産性と労働生産性は国によってかなり異なっているのにもかかわらず、最低賃金の絶対値がここまで収斂していることは、非常に興味深いです。当然、同じ金額になれば、労働生産性の相対的に低い国の場合、労働分配率はかなり高くなります。

おそらく、これはグローバル化の影響ではないでしょうか。確かに、EUでは各国の最低賃金を底上げして、高い金額に収斂させていくという政策的な動きもあります。なお、この表では、アメリカの最低賃金は連邦政府の7.25ドルではなく、各州の最低賃金を最低賃金で働いている人口で加重平均したものが使われています。

この国際水準を日本に当てはめると、日本の最低賃金は1178円となります。

日本の最低賃金は2001年では、ポーランドの1.8倍、韓国の2.0倍でしたが、2020年では、ポーランドより3%だけ高く、韓国より8%安くなってしまっています。

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