「最低賃金1178円」が国際的に見た常識的な水準だ コロナを「言い訳」にしてはならない4つの理由
世界のどこでも、企業側は最低賃金の引き上げに必ず反対します。大昔から、最低賃金を引き上げると失業者は増える、企業は倒産する、その結果経済が崩壊すると言います。日本も例外ではありません。
日本商工会議所は、2020年には「雇用を守るため」と、据え置きを主張し、その結果、最低賃金の引き上げは全国平均でたったの1円になりました。今年もコロナ禍が収まっておらず、影響が大きいことを理由に、日本商工会議所は据え置きを訴えています。
しかし、去年はともかく、今年この理屈を振りかざすには問題があります。
コロナを言い訳にしてはならない4つの理由
まず、新型コロナの経済に対するダメージは、日本より諸外国のほうがかなり深刻だったのに、2020年にアメリカでは5.1%、欧州は5.2%も最低賃金を引き上げています。2021年もアメリカは4.3%、欧州は2.5%引き上げました。
海外では最低賃金を引き上げたのに、日本では据え置きになった理由の1つは、おそらく、日本が「合成の誤謬」に弱いからです。
確かに、コロナ禍において、飲食・宿泊と娯楽業は大変な打撃を受けています。ただ、コロナの打撃はこれら3業種にほとんど集中しています。これらの業種の労働者は、海外でも日本と同様に全雇用者の1割程しか占めていないので、これらの業種には別途支援策を設けたうえで、最低賃金を引き上げています。
労働者の1割が働いている業界が大変だからといって、引き上げても問題のない9割の雇用者の最低賃金を引き上げないわけにいかないというのが、日本以外の先進国の対応です。
日本は影響が大きかった1割だけに焦点を当てて強調し、据え置きを訴えているのです。これは合成の誤謬以外の何物でもありません。
今年の引き上げはタイミングも重要です。日本の場合、最低賃金の引き上げは10月から実施されます。今年は世界経済が約6%成長すると言われています。
仮に、今年最低賃金を引き上げなければ、次の引き上げのタイミングは来年の10月になってしまいます。ワクチンの接種が広がり、経済活動の回復の本格化が期待される今年の下半期に合わせて、個人消費をさらに刺激するためには、最低賃金も引き上げるべきでしょう。
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