「最低賃金1178円」が国際的に見た常識的な水準だ コロナを「言い訳」にしてはならない4つの理由

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理由3:小規模事業者の労働分配率は大企業より低い

また、「小規模事業者の労働分配率は80%だから、最低賃金の引き上げには耐えられない」という指摘を受けることがありますが、この主張はまやかしです。

節税のために役員報酬を増やすことが認められているので、約6割の企業が赤字決算となっているのは有名な話です。さらに、赤字企業の実に94%を小規模事業者が占めます。景気と関係なく、昭和26年から赤字企業の比率がずっと上がっていますので、明らかに不自然な動きです。節税目的で赤字にしている企業が多いと考えるのが自然です。

法人企業統計を分析すると、2019年では、小規模事業者の従業員の労働分配率は51.5%で、大企業の52.5%より低いのです。大企業の人件費の中で、役員報酬は2.8%でしたが、小規模事業者はそれが38.2%も占めています。

つまり、小規模事業者の従業員の労働分配率は大企業並みに低いのですが、小規模事業者は残りの利益の大半を役員に分配して法人税を抑えているので、全体の労働分配率が高く見えるだけなのです。

弱いところを見極め、ピンポイントで補助するべき

理由4:地方は地方創生など別のやり方で守るべき

最低賃金を引き上げたら、「地方が大変になる」というのも同じようにまやかしです。地方では小規模事業者で働く比率が高いので、小規模事業者の労働分配率が8割だというまやかしを誤解して、地方は大変なことになると言っているだけだからです。

そもそも、半分以上の中小企業の雇用者は大都市圏で働いています。地方には中小企業の数は少ないので、この地方崩壊説も意図的な合成の誤謬だと言わざるをえません。

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地方の小規模事業者が大変だというのなら、地方創生などの施策でピンポイントに支援するべきです。全雇用者の最低賃金の引き上げを阻害するために、中小企業の雇用全体のうち、少数しか占めない地方の問題を悪用するべきではありません。

諸外国では企業が最低賃金の引き上げに応じ、実際に賃金を毎年引き上げているので、日本が今年も引き上げないと、日本の給料水準はさらに諸外国から引き離されることになります。

人口が減少している間は、個人消費を守り、さらに増やすには、所得の増加しか方法はありません。財政出動で持続的に支えるのは不可能です。

日本は今年こそ、キチンとした根拠とエビデンスに基づいて、総合的な判断ができるかどうかが問われています。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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