トランプはなぜ「ツイッター騒動」を起こしたか ソーシャルメディアに欠ける「権力の自覚」

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トランプ大統領(右)はソーシャルメディア大手の法的保護を制限する大統領令に署名した(写真:AP/アフロ)

歴史を振り返ると、権力者がさまざまな手段を使って、メディアを意のままに操ろうとして圧力をかけることは珍しくなかった。

言論や表現の自由を盾に、メディアが権力者の意に沿わない報道を継続すればさまざまな圧力をかけ続ける。独裁国家であれば、為政者が自らに批判的なメディアを社会的に抹殺してしまうこともあるだろう。しかし、まともな民主国家ではそうはいかない。権力者とメディアの間に、良い意味での緊張関係が存在するのは、健全な民主的社会の証しでもある。

ツイッター社の対応にトランプ氏が激怒

アメリカのトランプ大統領とアメリカ主要メディアとの対立はすでによく知られている。この対立が先日、新たな展開を見せた。

トランプ氏が発信した複数のツイートに誤りがあるとみたツイッター社が、事実関係を確認するようユーザーに呼び掛ける警告文をつけたり、ツイートそのものを非表示にしたのだ。

トランプ氏は激怒し、ソーシャルメディア企業の訴訟リスクを減らすための法律の改廃を求める大統領令に署名した。トランプ氏が愛用してきたソーシャルメディアがとうとう攻撃の対象となったのだ。

問題になったトランプ氏のツイートの1つは、カリフォルニア州が大統領選に郵便投票を導入しようとしていることに対し、「郵便投票は詐欺だ」などと激しく批判する内容だった。郵便投票は新型コロナウイルス対策として打ち出されたもので、すでにいくつかの州でも導入されており、大きな問題はないと評価されている。

トランプ氏の批判はいつも通り言葉は激しい。しかし、明確な根拠は書かれていない。郵便投票は投票所に足を運ばない有権者でも手軽に投票できるため、投票率が高くなる可能性がある。再選を目指すトランプ氏にとって、この制度が自分に不利になるとわかっているから黙っていられなかったのだろう。しかも、ツイートの内容に明確な誤りがいくつもあった。

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