トランプはなぜ「ツイッター騒動」を起こしたか

ソーシャルメディアに欠ける「権力の自覚」

この力が2010年以降、アフリカから中東へ広がった大規模な反政府運動「アラブの春」のエネルギー源にもなり、民主主義を進化させる希望のツールと期待された時期もあった。しかし権力者らがその力に気がついた瞬間、ソーシャルメディアは政治家にとって自らの権力維持のための魅力的なツールとなった。

トランプ氏の場合、批判的な人は最初から彼のツイートに触れようとはしない。集まるのはトランプ氏の支持者であり、どんな内容であれ受け入れ、共鳴し合う。裏を返せば、トランプ氏に対する異論は寄せ付けない。支持者による閉じた空間ができあがっているのだ。

ソーシャルメディアの危険性とは

こうしたメカニズムは、一般人の仲間うちの世界であれば問題はないだろう。しかし、トランプ氏のツイートが作っているのは、大統領と多数の国民が加わっている一種の「公的空間」である。この変質が問題なのである。

トランプ氏は内政や外交問題、あるいは大統領選や民主党などについて、自分を正当化するためにおびただしい数の発信を続けている。感情的で激しく、しばしば大統領にふさわしくない下品な言葉も使われる。その内容は、政策を語るにはあまりにも論理やデータに乏しい。まともに読めば、説得力などない文言が列挙されているだけだ。利用者がそれを的確に判断し、評価できるのであれば問題ないが、そうはなってはいない。

アメリカのインターネット活動家として知られるイーライ・パリサー氏は、その著書『閉じこもるインターネット』(2012年、早川書房)などで、ソーシャルメディアの持つ危険性を繰り返し表明している。

パリサー氏は、私たちがソーシャルメディアを使って情報を得るとき、画面上にはユーザーが見たいものや好みの分野などが予測されて表示されていると指摘する。それを選ぶのがアルゴリズムという機能であり、情報は知らない間にフィルターにかけられているという。つまり、トランプ氏を支持する人には、トランプ氏のツイートをはじめ、トランプ氏支持のツイートが優先的に表示され、逆のものは出てこない仕組みになっている。

そして、パリサー氏は「これまでは編集者によって情報の流れがコントロールされていた。インターネットが現れてこの門番を追い払った。今、私たちが目にしているのは、編集者という門番からアルゴリズムという門番にバトンが渡されているものだ。問題はアルゴリズムには編集者が持つような倫理観念がないということだ」と警鐘を鳴らしている。

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