【産業天気図・空運】国際旅客・貨物が急減速、燃料高一服も先物予約済みで効果薄、「雨」模様続く

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

航空業界は2009年度前半、後半ともに「雨」模様が続く見通しだ。成長期待の国際線が業務渡航(ビジネスクラス)中心に昨秋から旅客数が急減速し採算が悪化。今後も厳しい状態が続くのは必至だ。各社は路線減便や廃止のほか、業務見直しによる大幅な固定費削減で対応する構えだが、売上減少スピードがそれを上回り利益を圧迫する格好だ。
 
 昨年9月の金融危機以降、航空需要が激減。特に国際線は前年同月比2ケタの減少が続く異常事態となっている。欧米に限らず全方面で需要と供給のミスマッチが続き、搭乗率は6割台と採算ラインの7割を切っている状況だ。また、国際航空貨物は旅客以上に激減している。各社とも将来成長に向けた先行投資の矢先だけに打撃は大きい。

一方、国内線は昨年末までは比較的堅調だったが、09年度は一転して厳しくなる見通しだ。低採算でも団体客などで売り上げ確保ができていたが、景気悪化を受けて、足元では減少傾向を見せ始めている。東京~大阪線などは新幹線との競争も激化しており、採算確保は至難の業だ。

こうした中、最大の利益圧迫要因だった航空燃料が、昨夏のピーク時の3分の1以上と大きく値下がりしたことは一部追い風だが効果は薄い。日本航空<9205>、全日本空輸<9202>の大手2社ともに先物予約によって10年3月期分の大半を購入済みのため、値下がりの恩恵をフル享受できるのは11年3月期以降となる見込みだ。逆に昨年は燃料高に応じて段階的に引き上げてきた燃油サーチャージが今年7月にはついにゼロにまで下がる予定。景気悪化の中で需要喚起につながればいいが、景気悪化の中では燃料費の補填が減る要因の方が大きく出るとみられる。

大手2社は過去最大規模の路線減便や廃止を断行。さらに日本航空は整備や調達物流など8部門での構造改革を軸に500億円規模のコスト削減を打ち出している。また、全日本空輸も「過去最大規模のコスト削減をしたい」(幹部)としており、今後の事業方針で詳細について説明する予定だ。ただ、両社とも厳しい状況に代わりはない。日本航空は09年度も2期連続の営業赤字、全日本空輸も営業減益必至で当面は視界不良が続きそうだ。

(冨岡 耕)

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