【産業天気図・銀行業】09年度も与信費用は拡大し厳しい環境続き連続赤字も。公的資金申請行増加も
09年4月~9月 | 09年10月~10年3月 |
銀行業界は2009年度もどしゃ降りの雨が止む様子はない。
08年度第3四半期(08年4~12月)は地域銀行109行のうち50行が最終赤字(単体ベース、非上場銀行を含む)という結果になった。大手行の決算も厳しい。主な要因は、2つ。まず、企業倒産の多発や景気後退による財務内容の悪化で、貸倒れ償却・引き当てである与信費用が増えていること。もう一つは有価証券の減損処理の拡大である。有価証券の減損処理には2つある。持ち合いが多いメガバンクをはじめ、株式の保有が多かったり簿価が高かったりして、株の減損額の多い銀行もあれば、融資先がなく、利息配当収入を海外の証券化商品や投資信託、REITなどの運用に頼り、減損が出ているケースとがある。無論、そのどちらでも損が膨らんだ銀行もある。
09年度について見通せば、株式の減損は08年度よりは減るとの期待感を持つ銀行もあるが、外国人投資家が一貫して売ってきていること、09年度は公的年金への財政融資資金(旧財政投融資資金)の償還がなくなるため、公的年金による買い支え原資がなくなり、株価が一段と下がる恐れがある。減損は発生し続け、期待しているほど減らないかもしれない。また、与信費用は、確実に増えてくる。企業倒産も減っていないうえ、08年度の融資先の惨憺たる決算を受けて、第1四半期~第2四半期にかけて貸倒れ引当金の増加が予想される。
銀行の収益基盤は預金を集めて融資か有価証券との運用の利ザヤで得る資金利益、手数料収益である役務取引利益、債券の売買損益などが収益の柱だが、このうち、役務取引利益は2007年度前半まで牽引してきた投資信託や保険などのリスク商品の販売が不調なため、前期の後半から低下してきた。これ以上下がることはほぼないと、考えられるが、資金利益も含めて、収益は上がりにくい環境だ。従って、利益回復は鈍く、最終的には08年度に続き、連続赤字に陥る銀行も少なくないと予想される。
メガバンクのうち、三井住友フィナンシャルグループ<8316>は株の簿価が相対的に低く、海外証券化商品への投資ももともと少なく、ほぼ処理済み。ただ、中小企業向け融資で強かったので、反面として与信費用の増加が懸念される。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>は、株の減損、与信費用が引き続き懸念されるが、世紀の大事業だったシステム統合をトラブルなく終えたため、費用の削減効果が出てくる。みずほフィナンシャルグループ<8411>は、こうした景気の後退局面では、大手法人を顧客とするみずほコーポレート銀行と個人や中小企業などのリテール顧客を対象とするみずほ銀行の2バンク制の非効率さがアダとなっている。
懸案を抱えているのは新生銀行<8303>とあおぞら銀行<8304>。どちらも、外資の経営のもとで、海外への投資で多額の損失を被っている。新生銀行は資本余力を欠き、あおぞら銀行は流動性(資金繰り)の面で弱さを抱える。両行とも5月の決算発表までには、なんらかの提携による解決策を発表するとしており、提携先が見出せるのか、要注目だ。
こうした中で、金融機能強化法に基づく公的資金による資本注入の申請を行ったのは現在、札幌北洋ホールディングス<8328>、南日本銀行<福証、8554>、福邦銀行<非上場>の3つだけだが、08年度末の株価次第で、08年度の決算と09年度の見通しを決定するなかで、公的資金の申請を検討する地銀も増えるものと見られる。
(大崎 明子)
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