【産業天気図・非鉄金属】市況急落、需要減退で雨足は強まる一方。合従連衡の噂も

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

昨年10月ころから降り出した雨は一段と雨足を強め、09年度も各社視界ゼロの中でなんとか赤字を回避するのに必至の形相だ。
 
 最大の要因は銅やニッケル、亜鉛などの国際価格の大幅な下落だ。たとえば銅のLME価格は昨年7月まで1トン8000ドル台で推移していたが、昨年後半から急落し足元価格は3000ドル台へと半値以下になってしまった。他のレアメタルも銅と同様にこの半年で半値ないしは3分の1に下落した。「会社四季報」春号でも各社の来10年3月期の売上高予想が強烈に減少しているのはこの理由による。
 
 もっとも、利益に直接影響するのは、買鉱条件(鉱石を調達するための条件)、つまり鉱石加工賃(TC/RC)であって、実はこちらは昨年に比べ大幅に改善する。今年1月に国内銅精練最大手のパンパシフック・カッパー(PPC)と鉱山大手のBHPビリトンが合意した買鉱条件は1年前に決めた08~09年積みの条件より約7割も改善した。となれば、利益も改善してもよさそうに見えるが、それ以上に肝心の非鉄需要が焼け石に水とばかりに減退し、円高も逆風となって吹き付ける。
 
 さらに、COFやTABなどのエレクトロニクス関連事業を抱える企業では、製錬以上に冷たい風が吹く。たとえば三井金属<5706>では、両半導体実装材料を含む「中間材料」事業の営業利益は第3四半期(08年4~12月期)に100億円以上の赤字に転落、第4四半期もほぼ同じ水準の赤字が続く。止血策として同社では今年9月までに4000人規模の人員合理化を進めるが、このうちの約半分がTABやCOFなど半導体実装装置部門なのである。それでも来期は営業赤字から抜け出せそうにない。
 
 かつてはフラットパネルディスプレイの成長に着目し、各社こぞって参入した市場だが、いまや黒字を確保できている企業は一社もない。製錬部門ではライバル企業と合従連衡が進んだ非鉄業界だが、「次はこっちか」との噂も立ち始めている。

(山本 隆行)

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