太陽電池に賭ける日本の電機業界、惨敗のデジタル家電から急シフト

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 対照的に勢力を伸ばしたのが、Qセルズや中国のサンテック・パワー、米ファーストソーラーなど。いずれも会社設立から10年に満たない、太陽電池の新興専業メーカーだ。

こうした企業は欧州における需要拡大を絶好のビジネスチャンスととらえ、株式市場で調達した多額の資金を使って短期間で生産能力を拡大。また、06年に原材料のシリコン不足が顕在化し始めると、すぐさま有力シリコン業者と長期契約を結んで大量の原材料を押さえるなど、新興専業企業の強みである機動力を発揮した。国内勢は増産投資と原材料争奪戦で後手に回り、04年当時5割あった日本企業の占有率は、わずか3年で2割台にまで落ち込んだ(下グラフ参照)。

参入障壁の低さも日本企業のシェア低下に拍車をかけた。太陽電池は生産ノウハウが製造装置に凝縮され、装置メーカーから製造装置を買えば、量産はさほど難しくない。つまり、一定の資金力さえあれば、品質や長期信頼性はともかく、誰でも太陽電池メーカーになれるのだ。こうした産業の特性と欧州での需要拡大とが相まって、ここ2~3年の間に欧州や米国、台湾・中国などで参入企業が続出。業界の調査によると、05年に世界で100社程度だった太陽電池への参入企業数は08年に300社を突破したという。

こうした事態に、従来FIT導入に慎重姿勢を見せていた日本の経済産業省も危機感を募らせ、ついに重い腰を上げた。

同省は今年1月から住宅用太陽電池設置の補助金を復活させたのに続き、太陽電池による発電分を電力会社に高値で買い取らせる日本版FITの早期導入計画を2月に表明。電力会社への買い取り義務づけなどの法的整備を急ぎ、早ければ来年春にも同制度をスタートさせる意向だ。

FITはすでに欧州各国で実施され、その先駆けとなったドイツでは、00年にFITの適用対象となった太陽光発電システムの設置量が急増。05年に日本を抜いて世界最大の設置国となり、地元の太陽電池メーカー、Qセルズが急成長する大きな要因にもなった。

経済産業省は「太陽光発電は日本のエネルギー政策のみならず、産業政策の観点からも極めて重要」(同省幹部)との認識を強めている。今回の日本版FIT構想の背景には、国内設置量を増やすと同時に、日本の太陽電池産業に量産効果の機会を与えることによって競争力を高める狙いがある。

はたして、“日の丸”太陽電池メーカーの反撃はあるのか。

ゴールドマン・サックス証券の太陽電池業界担当アナリスト、渡辺崇氏は、「悲観的な見方はしていない」と話す。


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