新幹線の車窓から見える「あの看板」の秘密 白地に赤い数字、寝具メーカー、アプリ…

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規制強化によって野立て看板の居場所は狭まりつつある(上:2009年、下:2015年)

さて、すっかりお馴染みになった野立て看板だが、実は新幹線沿線のどこでも見られるというわけではない。例えば、熱海~掛川間。特にE席側には野立て看板はひとつもない。

これは、静岡県の屋外広告規制条例が厳格に適用されているため。特に富士山が見える区間では、新幹線の線路から1000m以内の屋外広告設置が制限されており、事実上の全面禁止の状態だ。

神奈川県平塚市も、2012年度から条例の運用を強化し、市内の新幹線沿線に設置されていた野立て看板は2013年夏までにすべて撤去された。ただ、野立て看板が撤去されたところで、平塚市内の車窓風景は特に良くも悪くもなっていない。一定のルール作りは必要だが、過度の規制が必要なのかは議論の余地がありそうだ。

一方、新たな試みも生まれている。セブンツーセブンは、昨年末から新幹線沿線に数基限定で、新たなデザインの野立て看板を登場させた。「謎の看板としてたびたびメディアで取り上げていただいていましたが、”当社のことをもっと知ってほしい”という思いから、新たな企画を立案しました」(磯島氏)

新しい看板がどこにあり、何が書かれているかは一切公表されていない。新幹線の車窓を眺め、探し出してほしいということだ。野立て看板は、新幹線の乗客にメッセージを送っているのである。

新横浜の近くで牛が見える!

さて、相模川を渡ると、新幹線は平塚市に入る。ここからしばらく野立て看板はないので、もうひとつ車窓を紹介しよう。平塚は、車窓ネタの宝庫だ。

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平塚市に入ってすぐ見える牛舎。約30頭の乳牛を飼育している

相模川を渡って間もなく、E席側の高架横に牛舎が見える。東京行きの上り列車なら、時間帯によっては高架線横を歩く乳牛の姿も見えるだろう。

東海道新幹線から、屋外を歩く乳牛を見られるのは、実はここだけ。新横浜駅からわずか7分。東京のベッドタウンでもある平塚市だが、実は神奈川県一の畜産の町でもある。

市内には40軒弱の酪農家があり、住宅地と隣接する環境で1200頭あまりの乳牛が飼育されている。ここで採れた牛乳は、大部分が神奈川県内の小中学校の学校給食として使用されているという。

しかし、後継者問題などから酪農を営む人は年々減少している。2000年には約100軒の酪農家と3000頭の乳牛がいたというから、この15年間で6割減になってしまった。平塚市内の区間では車窓から3~4軒ほどの牧場が見えるが、いよいよ貴重な存在だ。中でも、新幹線の車窓から牛を直接見られるのは、先ほどの1軒だけである。

列車は相模平野の広大な田園地帯に入り、時速260km前後で快調に走る。鴨宮モデル線時代には、試験列車が最高速度でテストを重ねた、新幹線のふるさとともいえる区間である。
 

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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