【産業天気図・百貨店】消費低迷で12年連続売上高縮小確実と「雨」降り続く、勝者なき競争続く

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予想天気
 09年4月~9月   09年10月~10年3月

 百貨店業界は2009年度前半、後半とも雨になりそうだ。「雨」予報は前回の予報に続く。昨年9月のリーマン・ショックを機に環境は激変。消費者は節約志向を強めており、業界をとりまく状況は厳しいままだ。
 
 本来なら書き入れ時のはずの冬商戦も不発に終わった。日本百貨店協会によると、08年の全国百貨店の売上高は7兆3813億円で前年比約4.3%減。11年連続で減少した。この数年、業界は少子高齢化が加速する地方での消費が減退すると判断、東名阪を中心とする大都市圏に投資を集中させてきた。だが、世界的な金融不況の影響でその頼みの大都市圏消費も一気に冷え込んでしまった。伊勢丹新宿店や三越日本橋本店など業界を代表する旗艦店でさえ、前年同月比でニケタ減の減収が続くのがその象徴だ。定額給付金による効果も限定的と見られる。
 
 この不況がどこまで続くのか、業界は「底」を図りかねている。残業代やボーナスカットという所得減ならまだしも、ことは正社員の雇用不安にまで及んでいるからだ。「09年度上期いっぱいは売上高ニケタ減が続く。さすがに09年度下期はニケタ減はないが、08年度の下期を上回れるとは思わない。無駄な費用を削るだけ削って黒字を確保する」(大手百貨店幹部)というのが実情だ。例えば最大手の三越伊勢丹ホールディングス<3099>は4月1日から伊勢丹の4支店(吉祥寺、松戸、相模原、府中)や三越日本橋本店などで営業時間を30分繰り上げ、19時終了(レストラン街など除く)とするなど営業時間を短縮、店舗運営コスト削減を推進する。
 
 市場が縮小する中、年明け早々には北海道の丸井今井が経営破綻した。丸井今井以外にも不振の地方百貨店は少なくなく、今後も地方の地場百貨店の淘汰は避けられない。

一方、大手は再編が進み、三越伊勢丹のほか、J.フロントリテイリング<3086>(大丸と松坂屋)、高島屋<8233>とエイチ・ツー・オーリテイリング<8242>、阪急・阪神百貨店)、セブン&アイホールディングス傘下のミレニアムリテイリングの4大グループが主導権を握る形となった。現時点では、4大グループ全てに体力が残っているが、10年秋の三越銀座店増床、11年以降の「大阪百貨店戦争」(11年のJR大阪三越伊勢丹新設、大丸梅田店の増床、12年の阪急百貨店建て替え)など競争が激化するのはこれからだ。
 
 2月末にはミレニアムが不振に喘いでいたそごうの大阪・心斎橋店をJ.フロントに売却することを決定したが、今後は大都市を中心に個店での優勝劣敗がいよいよ明らかになる。消費低迷が続く中、12年連続で業界の売上高が縮小するのは確実。その中で勝者なき競争が繰り広げられようとしている。

(福井 純)

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