韓国政府が描く雇用増は「絵に描いた餅」だ 2016年の韓国経済は就職難が深化する

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現在の韓国は、自分たちのことで手一杯の状況だ。すべてのセクターの事情がよくない。家計は伸び悩む所得と増える負債に苦しんでおり、企業は業績悪化と不透明な経営環境に揺れている。短期的には政府が公共部門での雇用を増やして持ちこたえることができるが、公共部門の雇用がいくら増えたところでも民間企業が増やす雇用とは比べものにならない。結局は、雇用は企業が増やさなければならない。

雇用状況が悪くなるたびに、政府は大企業を激励してきた。しかし、今は彼らも「死にそうだ」と悲鳴を上げている。韓国企業の営業利益率は、2013年の4.7%から2014年には4.3%に下落している。1000ウォンのものを売ったとしても、利益は43ウォンしか残らないという話だ。これは、韓国銀行が上場企業1536社と未上場の主な企業195社を対象に調査した結果だ。

韓国銀行が韓国企業の成績表を発表するようになった2003年以降、数字は最も厳しい。企業の対前年比売上高増加率は、2013年の0.7%増から2014年は1.5%減になった。売上高が前年比でマイナスになったのは、世界的な金融危機で0.1%減となった2009年以来のことだ。内需と輸出がともに振るわなかった2015年の成績表も、さらに悪化しそうだ。

長期不況は韓国の製造業全般に広がっている。中国など新興国の成長鈍化や家計負債のリスク高による消費減少、米国の金利引き上げや国際金融市場の不安感増大、為替や原資材価格の変動性の上昇など、悪材料が山積みである。韓国屈指の大企業まで人員削減を行っているため、雇用の拡大は期待できない。

中小企業の雇用余力は世界でも最下位圏

低成長や企業業績の悪化より、さらに複雑な難題がある。それが労働市場の不均衡だ。韓国は大企業を中心として高い経済成長を遂げてきたが、中小企業の雇用余力は依然として世界最下位圏にある。教育に莫大な投資(学力インフレ)を行いながらも、人的資源はきちんと活用されていないのだ。同時に、超高速で高齢化が進み、生産可能人口が減少する危機に直面している。

このような慢性疾患を治療しないまま、労働市場内部の問題、すなわち定年や賃金・解雇などのキーワードだけに集中し、根本的な解決策を求めようとはしなかった。2015年、朴槿恵政権は労働改革を最大の課題として打ち出したのもこのためだ。2016年からは、従業員300人以上の企業は定年を60歳から65歳に延長しなければならない。

多くの企業がすでに準備してきたとはいえ、賃金ピーク制など多くの手段が確定されていないのが現状だ。賃金ピーク制を導入したとしても、定年保障と青年の雇用にどれだけの効果があるかは不透明だ。ますます広がる正規・非正規職の待遇格差も、1年だけの成果では解決できない構造的な難問だ。2016年の雇用展望は暗い。

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