韓国経済「3%成長」の目標は、かなり厳しい 2016年の韓国経済、構造改革に注力すべき

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具体的な見通しは異なるが、韓国経済への見方はほぼ同じだ。成長率予測を引き下げた経済協力開発機構(OECD)は、その理由として「高いレベルの家計負債」を指摘した。この家計負債が民間消費にとって重荷となると予想する。また、対外環境もよくないとし、中国の景気鈍化と新興国需要の現象が続き、ウォン高によって輸出の不振も続くと説明する。

OECDは韓国政府に対し、景気回復のためのさらなる財政投入といった積極的な金融政策が必要だと述べている。下落した潜在成長率を高め、労働人口の減少に備え、女性がより活発に経済活動に参加できるように支援すべきだと助言する。

OECDが指摘するように、潜在成長率が低下したことも大きな心配のタネだ。大宇(デウ)証券は、2020年には潜在成長率が2.3~2.8%水準にまで下落すると予想している。「韓国経済は過去に経験したことがない低成長に直面している」(同証券)ためだ。

韓国投資証券エコノミストのパク・ジョンウ氏は「韓国の中長期的な潜在成長率が2%台に突入した」と言う。そのためか、2017年の成長率見通しもよくはない。サムスン証券は同年の成長率見通しを2016年の2.9%より低い2.7%と予想する。大宇証券も同2.8%より低い2.7%。サムスン証券は、2017年に労働可能人口がピークに達して減少局面に入り、労働・資本生産性が鈍化するうえ、中国の成長戦略の変化で輸出不振が構造的なものになる可能性があるとまで予測している。

中国だけではない。米国の動向も重要な変数となる。米国が金利の引き上げを行ったため、米ドルに頼る景気浮揚策の実施も難しくなる。これにより輸出不振が最大の問題となり、韓国は今後も低成長が続くという説が出てきた。

「韓国には成長する要素がない」

LG経済研究院のイ・グンテ首席研究委員は「韓国にとって現在、過去のような成長因子がないものと見るべきだ。長期低迷リスクが近づいているが、人口構造の変化などで今後5年以内には1%成長へ落ち込むこともありうる」と指摘する。イ首席研究委員はまた、「2016年は2015年よりもよくなる要因がなく、景気サイクルは下降局面に入った。世界的にも低成長が続いて生産活力が低下しているが、これは世界的な構造的変化として考えるべきだ」と付け加える。

もちろん、反論もある。2016年には3%成長を維持すると見ている未来アセット証券と新韓金融投資は、2017年にもそれぞれ3.2%、3.0%と予測している。2015年は2%台だが、すぐさま3%台成長へ回復できるとの肯定的な見方を示す。

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