【産業天気図・住宅/マンション】市場縮小で選別が加速、ブランド力の弱いマンション業者には厳しい環境に
住宅・マンション業界の2008年度は年間を通じて曇りとなりそうだ。
昨年以降、それまで数年続いたブームにはっきりと翳りが出て来た。不動産経済研究所の調べでは、首都圏の新規発売戸数は1999年以降、毎年8万戸超で推移してきたが、06年に7万4463戸と8万戸を割った後、07年には6万1021戸と一気に7万戸台も割り込んだ。この間の年間契約率を見ても、07年(83・8%)は92年(83・9%)以来、15年ぶりの低水準となった。理由は、6月の改正建築基準法施行に伴う混乱からの様子見やサブプライム問題に関連した株価下落などだ。しかも、改正建築基準法による建築確認の遅れについては、影響本格化はむしろ08年以降になる。不動産経済研究所では08年の首都圏の発売戸数を5・4万戸と、07年をさらに下回ると見ている。
今後のマンション・住宅業界のポイントを予測すると、ベストシナリオはサブプライム問題が早期に解決し、株価が回復することだ。ただ、その場合、長期金利の上昇といった購買層の背中を後押しする材料も出てくる。
しかし、その可能性は薄く、むしろ内外景気の後退から全体環境は悪化する可能性が大きく、ゆえに購買層の商品選別は一段と厳しくなることが予想される。実際、昨年後半から、モデルルームに来場してから契約までの時間が長期化していることはよく指摘されることだ。また、エリアと売れ行き動向が必ずしも直結せず、商品の魅力度が選択の基準になっている点でも変化が見られる。例えば、郊外でも駅に近く、大型所業施設が隣接されているような物件やバス便でも商品が優れていれば順調な売れ行きを見せてる。逆に、都心でも価格の割に特徴がなければ不振という結果もある。そのため、価格引下げが唯一の戦略ではなく、あくまで「費用対効果」がポイントになる。その意味で、市場は一段と2極化し、ブランド力の弱いマンション業者には厳しい経営環境が到来することが予想される。
一方、住宅についても、昨年後半以降、マンション同様で購入層による買い急ぎの姿勢は見られない。むしろ、購入を手控えて、賃貸マンションなどに留まり、市場環境の変化を待つといった姿勢が強まりそうだ。
個別企業では、ブランド力があり、比較的に好立地の用地取得が可能な大手不動産会社は問題ない。例えば、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>、野村不動産ホールディングス<3231>、東京建物<8804>、大京<8840>など。また、中堅でもゴールドクレスト<8871>、日本綜合地所<8878>は比較的魅力度の高い商品を持っており増益を維持しそうだ。が、郊外立地で商業施設の開発力も乏しい中心の中堅以下の不動産会社は厳しい状況に置かれている。また、経営統合の動きも目立ちだした昨年、三菱地所が藤和不動産<8834>を持分法適用会社から連結化したほか、中堅のジョイント・コーポレーション<8874>も4月に子会社のエルカクエイと不動産分譲部門を統合し、ジョイント・レジデンシャル不動産にする。
【日暮 良一記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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