新日本監査法人、遅すぎた「トップの辞任」 金融庁処分で、上場企業は監査法人交代も
同様に、委員会設置会社に移行している、ある巨大非製造業会社も「監査委員会は、監査法人の再任、不再任などの議案を取締役に提出する役割を担っているが、当社の同委員会では3月から4月の取締役会に議案を提出するようなスケジュールで意見を出し合っている」と説明する。
ここまで明確ではなくても、新日本の監査先企業ではすでに、「年明けの取締役会で監査法人問題を議論しないわけにはいかない」(上場する非製造業)、「監査役が監査法人の見直しを強く主張している」(上場する製造業)といった話が漏れ出している。
新日本が問題視されたのは東芝の監査だけではない
行政処分が下って早々に、監査法人交代の機運が高まっている背景には、この間の資本市場改革がある。
コーポレートガバナンス・コード、シチュワードシップ・コードの導入によって、企業経営者は株主に対する責任に敏感にならざるを得なくなり、機関投資家は株主の代表として企業経営者との議論を尽くす役割を要請されるようになった。
全社のコーポレートガバナンス・コードでは、独立社外取締役の導入とその役割が後押しされ、前述した製造業の社外取締役のような行動が期待されているとすら言える状況になっている。
今回の行政処分をめぐっては、やや誤解を持たれている面がある。世間を騒がした東芝の不正会計事件との関連が前面に打ち出されたことで、新日本の問題と東芝事件がイコールで結ばれるという図式が描かれがちであるということだ。
確かに、東芝との由々しい馴れ合い関係がここまで問題を深刻化させたという衝撃は大きい。それ以上に、公認会計士・監査審査会が行政処分を勧告し、これを受けて金融庁が新日本監査法人に行政処分を下したのは、何も東芝の会計監査だけに限って問題視したからではない。
行政処分の理由には、東芝以外の監査に関しても、「運営が著しく不当なものと認められた」とあるからだ。新日本の監査先企業は今後、「著しく不当な運営」と指弾された監査を受け続けることについて、株主に説得力を持って説明することが求められかねない。
そのタイミングは、12月期に本決算を迎える企業であれば3月、3月期に本決算を迎える企業であれば、6月に開催する株主総会の場となる。
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