吉本興業のタイ事業を背負うタイ人の正体 韓流に負けない「日本のよさ」をもっともっと

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その点、MCIPは民間が出資しているから、シビアです。タイよしもととしても失敗する事業はできない。僕自身、ほとんどの時間をここに注ぎ込んでいます。

今、MCIPのプロジェクトとして考えているのは「リアル・ジャパン」。お笑いやライブも含め、ジャパン・コンテンツに手を触れて、肌で共感できるスペースを作りたい。しかも、リアルであると同時に、ネットでもつながるコミュニティ。どんな形がいいのか、僕にもまだ分からない。ただ、「バンコク花月」をやったのではダメでしょうね。

――タイでジャパンコンテンツを広げる鍵は何でしょう。

日本を好きな人はもう好きなんです。でも、日本に旅行に行ける若者が増えている一方、まだまだ日々の生活に追われている若者が大勢いる。タイではどうしても貧富の差を考えざるを得ない。

日本に旅行し、寿司も食べている富裕層のほうに焦点を合わせれば、当面、おカネは取れる。けれど、次につながるか。

ジャパンコンテンツを深く浸透させようと思ったら、生活に追われている、もう一方のマーケットを攻めていくしかない。富裕層をしっかり押さえながら、もう一方のほうもテストしていく。この二つ、やり方は違うでしょうね。同じようにやってもうまく行かない。

それから、一口にASEANと言っても、各国の文化はみんな違う。共通のスタンダードはない。だから、ジャパン・コンテンツをアジアに広げるやり方も一様ではない。

タイ人のカルチャーとかかわって双方向で

タイはタイで、タイ人がオリジナルなカルチャーを作る時代に入ってきている。そこに日本の要素をどう持ち込んでいくか、というのがタイよしもと。タイのオリジナルなタレントを日本にデビューさせてもいいし、「住みます芸人」とタイ人がコンビを組んでもいい。一方通行(の押し付け)ではなくて双方向。そういうことができるのは、タイよしもとだけでしょう。

アイリスオーヤマの大山健太郎、吉本興業の大崎洋という二人のカリスマから僕が学んだのは、ぶれないこと。吉本興業は104年間、地道にやってきた。タイよしもとも、ぶれずに、次につながることを着々とやっていきます。

で、目下、タイよしもとで一番大変なのはスタッフの確保。日本語もエンタテイメントも分かるという人間はざらにいないので。

ねぇ、大崎社長、そろそろ、日本人スタッフを送ってくれてもいいんじゃないですか。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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