日経とFT取り合った独巨大メディアの正体 老舗アクセル・シュプリンガー変貌の軌跡

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最初に米企業に投資したのは12年。民泊紹介サイトAirbnb(エアビーアンドビー)にそれほど多額ではないが出資を行った。デップナーがAirbnbの創業者ブライアン・チェスキーに会ってほんの数週間後のことだった。

「成長の可能性と、ビジネスモデルのシンプルさに驚いた」とデップナーは言う。金銭的な投資だけでなく、アクセル・シュプリンガー傘下の不動産ポータルサイトimmonetは、ドイツでAirbnbとマーケティングで協力することになった。

「安住の地」から無理矢理外に出す

Airbnbへの投資を決めたのと同じころ、シリコンバレーにはアクセル・シュプリンガーの経営幹部3人が送り込まれていた。デップナーによれば、経営幹部を「安住の地から」無理やり外に出すことを意図して行ったプログラムだったという。これ以降、同社では幹部社員向けの研修を制度化し、パロアルトに支社を置くことになった。

「社員には学ぶ姿勢を持って欲しいと思っている」とデップナーは言う。ちなみにデップナーはベースギターが得意で、フランクフルト大学で音楽学と演劇を学び、ボストンのバークレー音楽院に留学した経験を持つ。

「この非常に変わった方法により、絆は非常に深まった。社風という点では、大きく変える効果があった」

ビルト紙のカイ・ディークマン発行人

ビルト紙のカイ・ディークマン発行人(51)も、パロアルトでの経験を通し大きく変わった。かつてのディークマンは典型的なドイツのメディア企業の幹部で、オーダーメードのスーツに身を包み、広い個人用オフィスで仕事をしていた。だがパロアルトから帰ってきた時には、フード付きのスウェットを着てスニーカーを履き、もじゃもじゃのヒゲを生やしていた。

また帰ってきたディークマンは、明確なメッセージを部下たちに示した。「ミスを恐れてはならない、失敗は成功のもとだと考えろと話した」と彼は言う(その後、彼はひげを剃り、着るものはビジネスカジュアルにした)。

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