日経とFT取り合った独巨大メディアの正体 老舗アクセル・シュプリンガー変貌の軌跡
最近では世界規模で読者を拡大しようと、同社は積極的にネット媒体への出資を行っている。
6月以降、アクセル・シュプリンガーはスリリストやミック・ドット・コム、ジョーントといった米デジタルメディア企業に相次いで出資。最も大型の投資案件としては、9月下旬に3億4300万ドルを投じてビジネス・インサイダーを傘下に収めたことが挙げられる。ビジネス・インサイダーはニューヨークに本拠を置く金融ニュースサイトだ。
10年内に海外売り上げを8~9割に
大型買収に失敗したこともある。この夏の英フィナンシャル・タイムズとの買収交渉では、最後の最後に13億ドルという買収額を提示したライバルの日本経済新聞に敗北してしまったのだ。
だが、これだけの大型買収を目指したという事実そのものが、アクセル・シュプリンガーのデジタル事業拡大への意欲がどれほど強いか示している。その後同社はすぐにビジネス・インサイダーへの出資を決め、英語圏への進出に勢いをつけた。またこれにより、同社は今後もデジタルメディアへの進出を続けるとの見方が強まった。
「10年くらい先には」売上のうちデジタル事業が占める割合がほぼ100%、外国での事業が80〜90%になる「可能性は否定しない」とデップナーは言う。ちなみに現在、外国事業が売上に占める割合は約50%だ「米市場の規模から言って、英語事業の大部分はアメリカが占めることになるだろう」。
ネット利用に積極的な若い読者層を擁するビジネス・インサイダーは、アクセル・シュプリンガーにとって「米事業のかなめとなる投資」だと、同社のデジタル事業の最高責任者であるイェンス・ミュッフェルマン(49)は言う。ミュッフェルマンはこの1月から、同社の米事業の責任者となる予定だ。
アクセル・シュプリンガーはアメリカで小規模なネット企業10社以上への出資も行っている。出資先の新興企業は大きく3つのカテゴリーに分類できる。メディアコンテンツにマーケティング、それに広告だ。