【産業天気図・自動車】急激な円高と原材料高で08年度は減益が続出で「雨」模様、ただ世界での日本車販売増は堅調を見込む
自動車業界の収益をめぐる環境は厳しさを増している。2008年度はトヨタ自動車やホンダ、日産自動車の大手を筆頭に1割前後の営業減益に転じ、自動車産業は「雨」模様となりそうだ。
その要因は為替に尽きる。今通期は1ドル114円、1ユーロ161円近辺に落ち着きそうだが、09年3月期はそれぞれ105円、150円を予想する証券アナリストが多い。こうなると、例えばトヨタは対ドルの9円の円高だけで営業利益が3150億円も吹き飛ぶ計算だ。ホンダや日産でも1500億円程度の減益要因となる。ここにきて為替は1ドル100円を切る展開になっており、来期前提を1ドル100円とすれば、減益幅は一段ときつくなる。反対に米ドルの影響が少なく(米国依存度小)、新興市場での拡大が続くスズキ、ダイハツ工業は来期も増益が見込まれる。
ただ、販売台数という観点でみれば、日本車メーカーの世界市場における強さに変化はない。筆頭がトヨタだ。08年(暦年)のグループ販売台数は985万台(前年比5%増)計画だが、地域別では、日本が160万台(同横ばい)、北米が284万台(同1%増)と頭打ちだ。しかし、これと対照的に新興・資源国はアジアが158万台(同20%増)、中南米が42万台(同11%増)、中近東が51万台(6%増)と高い伸びを見込む。とりわけ世界第2位の市場となった中国は70万台と前年比43%もの拡大を見込むほどだ。こうした動きの加速は、ホンダや日産など他の日本車メーカーも酷似する。各社とも新車開発などに投入するヒト・カネは、新興市場向けが北米向けを凌駕する段階に入った。08年は、モータリゼーションが本格化するBRICs4カ国の自動車販売台数が初めて世界最大の市場=米国を超える見通しであり、メーカー各社が軸足を新興市場に移す流れは加速する。
現在最も元気のない米国についても、実は08年度の日本車メーカーの販売は全体需要の減少に対し、横ばい・微増を維持できるという証券アナリストの予想が多い。1バレル100ドル突破の石油高騰で低燃費の日本車人気が続き、各社とも小型車やハイブリッド車が好調でシェア拡大が続くからだ。短期的には、円高と鉄鋼など原材料高で減益は必至だが、こうした外部環境の厳しさが一巡してくれば、日本車メーカーはすぐにでも収益拡大に反転する公算が強い。
【野村 明弘記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら