韓国でベンチャーブーム再来も、拡大への素地は不十分
米国ではヤフーとグーグル以降も、ユーチューブやフェイスブック、グルーポン、ピンタレストなどがベンチャー神話を引き継いだ。サムスン経済研究所によれば、現在のシリコンバレーには企業価値が10億ドルを超えるベンチャー企業が20社超。前出のチェ氏も「米国ではシンデレラ企業が相次いで登場し、巨大企業によるベンチャー買収も活発。ベンチャー部門の好循環が確実に根付いている」と強調する。
少数の大企業が市場と人材を独り占め
サムスン経済研究所のチェ・ビョンサム首席研究員は「韓国では99年、世界初のインターネット電話サービス・ダイアルパッドを出したセロップ技術以降、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のアイラブスクールとサイワールドが登場した。革新的な事業モデルを打ち出してベンチャー創業が活発になったが、最近は独創的な事業モデルの発掘が進まない」と言う。「韓国ベンチャーはトレンドをつかむ能力には優れているが、グローバルな観点から体系的な戦略を構築するのが下手」(チェ研究員)。この指摘は、ベンチャー業界でも共有されている。
少数のリーディングカンパニーが市場と人材を独り占めする構造が固定化し、企業家の自信喪失や能力不足、創業初期の資金不足、投資回収の難しさなどが重なり、ベンチャーが育つ環境にないということだ。
最近、「10年ぶりのベンチャーブーム」という声が出始めた。03~05年に1万社を割ったベンチャー企業数は、今年6月末現在で2万6000社に増えた。昨年の売上高が1000億ウォンを超えたベンチャー企業が381社、昨年比で66社増。昨年の韓国ベンチャー新規投資額は1・26兆ウォンで、1兆ウォンを超えたのは10年ぶりだ。
しかし、中身は脆弱なままだ。何よりも、草を巨木に育てうる土壌が弱い。韓国でベンチャーバブルが崩壊した00年以降、エンジェル投資額は5000億ウォンから昨年では300億ウォン台となっている。