「ビッグデータ」でさらに進化するO2Oの世界《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》

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O2Oにおけるビッグデータは、ネットで取れるさまざまなデータに加えてリアルのデータも収集する。ネット上のどの情報から利用者が実際にリアル店舗に来店、購買に至ったのかという分析が必要となっていくだろう。
 
 利用者は、O2Oのような便利でお得なサービスを“無料”で利用する代わりに、何に興味を持ち、どこに行き、どのような商品を購入し、誰と交友関係を持っているかといった、個人情報、ライフログを提供していることになる。
 
 利用者からライフログを受け取る以上の価値のあるサービスを提供し、アピールできるかが、企業がビッグデータを活用するうえでの重大なカギとなる。

プライバシー問題もますます重要に

いいことばかりではない。重大な課題もある。

まず、避けて通れないのは、プライバシー問題だ。

この流れを突き詰めると、個人の人格に関する情報、人間関係、資産情報など極めてプライバシーにかかわる領域に立ち入っていく可能性がある。企業は、利用者へのデータ取得の事前同意や、データの利用用途の許諾などの運用を徹底する必要がある。

収集・蓄積した膨大なデータをいかに価値に変えることができるかも非常に大きな課題だ。原油は精製し、ガソリンなどの燃料やプラスチックといった石油化学製品を製造することで、初めて役に立つ。

ビッグデータもしかりだ。

膨大なデータを、加工・分析し、商品のおすすめ情報や個人行動に最適化された広告・販促、需要予測などの価値あるデータへ変換しなければならない。データだけを貯めていても、コストがかさむばかりで意味はない。

ビッグデータは、データ量が巨大というだけではない。従来のデータベースでの管理が困難な構造化されていないデータ(非構造化データ)を含む多様な種類のデータを持つ。時々刻々とリアルタイムに蓄積されていくという特徴もある。従来の整理されたデータとは異なる特徴を持つため、分析や活用は、一筋縄ではいかない。

ビッグデータを分析できる技術を持つ「データサイエンティスト」と呼ばれる人材が、米国では奪い合いになっているという。データサイエンティストに要求されるスキルは、非構造化データの情報技術、数学、統計学の知識など専門性が非常に高い。日本企業においても、データサイエンティストの育成や外部企業からの獲得が急務になるだろう。

今後、ソーシャルメディア上の情報、NFC(近距離無線通信規格)などによるモバイル決済情報、店舗内や街中、自動車に接続されたセンサーデータなど、多種多様なデータが、爆発的に増大する。

企業にとって、「ビッグデータ」をいかに強力な武器に変えることができるか。それが、顧客への提供価値を上げ、自社の競争力を高めるための重要課題になるだろう。
(ITアナリスト・松浦由美子 =東洋経済オンライン)

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