「コミュ力だけ就活生」は、もう通用しない 学生の「地道な努力」を、いかに評価するか

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すべての学生は、少なくとも卒業しなければなりません。卒業には、学校によって多少異なりますが、最低124単位を取得することが求められます。90分×15回の授業で2単位もらえるのが一般的ですので、成績表には4年分、1395時間の活動の結果が、教員という「他者」の評価とともに載っています(もちろん、実際に就活をするのは4年生の途中ですから、卒業単位がそろっていない学生もいるでしょうが、それでも長期間であることは間違いありません)。このように長時間・長期間にわたる活動の結果を活用して質問することで、「日常的な行動」「長期間の継続的行動」をあぶりだすことができるのです。

学生に何をメッセージするか

私は、リシュ面を実施することのもっとも大きな採用上のメリットが、ここにあると思っています。従来のガクチカを聞く質問ではわからなかった、長時間・長期間の行動における地道な日常的行動をしっかり見ることで、いわゆる「コミュ力」がそれほど高くない学生の中から、欲しい人材要件を持った学生を見出すことができるようになるのです。

今の学生は、いわゆる「コミュ力」が高いことが就活に勝つ必要条件だととらえている節があります。各種アンケートで、企業が求める人物像の筆頭に「コミュニケーション能力」が来ているのですから、これはある意味当然です。つまり現状は、企業が学生に「コミュ力」こそがもっとも重要だというメッセージを送っていることになっているのです。

もちろん、いわゆる「コミュ力」も大切ですが、仕事に必要な素養はそれだけではありません。「物事を構造的に理解し、相手に合わせてわかりやすく説明する能力」も、「地道な努力ができる能力」もまた、極めて重要な素養です。企業がリシュ面を実施することは、学生に対して、こういったメッセージを送ることになるのです。これは、従来の「コミュ力偏重」のメッセージに比べて、ずいぶん健全なメッセージではないでしょうか。

まだリシュ面を導入していない企業の人事部の皆様にはぜひ、検討を始めていただきたいと思います。

辻 太一朗 大学成績センター代表

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つじ たいちろう / Taichiro Tsuji

1959年生まれ。京都大学工学部卒業。リクルートで全国採用責任者として活躍後、1999年アイジャスト創業。2006年リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。2011年、NPO法人「大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(略称DSS)」設立。2014年、大学成績センター設立。著書に『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』(東洋経済新報社)などがある。

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