「コミュ力だけ就活生」は、もう通用しない 学生の「地道な努力」を、いかに評価するか

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こういった「判断ミス」の原因として、何が挙げられるでしょうか? いろいろあるかと思いますが、私の経験上ダントツで多いのが、「口がうまかった」「話があまりぱっとしなかった」など、コミュニケーション能力、いわゆる「コミュ力」を重視しすぎたことによる弊害です。

つまり、「コミュ力」が高い学生を実際以上に高く評価し、「コミュ力」が低い学生を実際以上に低く評価してしまうのです。多くの企業で「欲しい人材」の要件として「コミュニケーション能力」が上位に入っていることも事実ですので、「コミュ力」で判断しがちになることは、ある意味仕方がないことだとも言えます。

しかし、採用担当者の本音としては、このように「コミュ力に騙される」ことなく見極めができれば、それに越したことはありません。多くの学生にとっても、「コミュ力だけ」就活生に負けて内定がもらえないのは、忸怩たる思いがあるのではないでしょうか。

実は、2017年の就活の方針を左右する経団連「指針」でも取り上げられた「成績表(履修履歴)」を活用した面接、すなわち「リシュ面」は、こういったコミュ力に騙されるという事態を回避するのに、非常に適した面接方法なのです。どういうことか、説明していきましょう。

大きく分けて、「コミュ力」には2種類ある

従来の「学生時代にどのようなことに力を入れましたか? 具体的なエピソードも含めて話してください」という質問(いわゆる「ガクチカ」)に対する回答でわかるのは、自分の経験やそのときの感情を、わかりやすく、臨場感たっぷりに話す「コミュ力」です。こういった「コミュ力」も、仕事において非常に重要だということは、疑いようがありません。

しかし、「コミュ力」にはもうひとつの側面があります。それが、「物事を構造的に理解し、相手に合わせてわかりやすく説明する」というスキルです。「取引先との打ち合わせ内容とその感触を、上司に手短に説明する」「競合製品と比較した自社製品の長所を、3点に絞って営業先に説明する」「提案している企画の要点を1分で話す」などという場面を考えれば、この「コミュ力」の重要性は、よくわかっていただけるでしょう。

後者の「コミュ力」は、「ガクチカ」を聞く質問では、判断するのはなかなか難しいことでした。これが、「コミュ力に騙された」という事態に繋がっていたのです。

ですが、成績表(履修履歴)を見ながら学生に質問する「リシュ面」では、後者のコミュ力の有無を、比較的簡単に見極めることができます。授業の内容を、簡潔に説明してもらえばいいのです。

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