レノアハピネス アロマジュエルに見るP&Gの徹底した「引き算戦略」《それゆけ!カナモリさん》

 

■付随機能を中核価値にすることで、他社製品との共存が可能に

 「レノアハピネス アロマジュエル」は従来の柔軟仕上げ剤の価値構造を変化させ、中核価値はおろか、実体価値も全て捨て去り、カテゴリーの枠を飛び出した徹底した「引き算戦略」を実行したのである。

実は、P&Gは2009年にも「引き算戦略」の商品を上市している。衣類用洗剤の「さらさ」である。同商品は逆に、中核価値である「衣類の汚れを落とす」ことに徹底的にフォーカスし、実体価値の「より白くする」という機能は引き算した。つまり、漂白剤や蛍光剤成分を取り除いた商品として製品化し、「洗剤の余計な成分が気になる」という層をターゲットとしたのである。

さて、「レノアハピネス アロマジュエル」の引き算戦略の真価はどのように現れるのか。それは、P&Gの売上の総和を「+α」することにほかならない。

P&Gによると「レノアハピネス アロマジュエル」は、「使用量によって好みの香りの強さを実現できる」ほか、「他の柔軟仕上げ剤と組み合わせて好みの香りを作れる」という。ここで言う「他の柔軟仕上げ剤」は自社の製品に限らない。競合他社の商品との組み合わせも当然OKだ。

P&Gは柔軟仕上げ剤のシェア1位ではない。そして、トップから1位を奪取することは容易ではない。だが、徹底して「引き算」を行って価値構造を変化させた結果、柔軟仕上げ剤というカテゴリーの商品ではなくなった「レノアハピネス アロマジュエル」は、他社商品と共生できる無敵の存在となったのだ。

「顧客はドリルが欲しいのではない、穴を開けたいのだ」とは、顧客ニーズの本質についてセオドア・レビットが著した有名な言葉だ。

「顧客はふかふかだけが欲しいのではない、良い香りが欲しいのだ」。消費者のニーズは刻一刻と変化している。それを見極め、価値構造を変化させ、大胆な「引き算」を展開したP&Gの勇気が大ヒットにつながったのだと言えるだろう。

※追記。昨年、東日本大震災の影響で相次いで中止された東北各地の夏祭りが、この夏は2年ぶりに開催される予定で、これらへの参加は“被災地ツーリズム”、観光による復興支援として注目を集めています。例えば津波による甚大な被害を被った福島県いわき市では、海を楽しむ参加型イベント「おなはま海遊祭」や、音楽と花火のコラボレーションを特徴とする東北屈指の花火大会「いわき花火大会」が8月4、5日に開催されます。直接的な地元への経済効果はもちろんのこと、県外からの訪問は地元にとって大きな励みになるなど、復興への大きな力になることが期待されています。皆さんも、よろしければ是非、参加されてみては? 本件、「被災地ツーリズム」という切り口でガジェット通信、マイナビニュースなどでも取りあげられています。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2012年7月6日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

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