外資系コンサルティング会社出身の毛見純子(maojian works株式会社 代表取締役)はマーケティングコンサルティング会社経営のかたわら、自らも働く女性としての視点を生かし、アパレルブランド「kay me」を立ち上げた。
kay meブランドの洋服はコンセプトが一貫している。一言でいうなら「キャリア女性によるキャリア女性のための服」だ。ターゲットは30代後半~40代前半の働く女性で、商品はほとんどがワンピース。仕事にもオフタイムにも着られる、上品で華やかなデザイン。イタリア製プリント柄を施したジャージー素材の高級布を使っており、長い時間着ていても疲れず、しわになりにくい。出張時にカバンに放り込んでも型崩れの心配もない。縫製とパターンは日本製にこだわり、価格は2万円台~4万円台で、3万円前後のものが中心となっている。
FacebookなどSNSを使ったクチコミで顧客を広げてきた。マンションの一室を使った予約制サロンでスタートし、後にオンラインショップを開設。ブランド立ち上げからわずか1年、6月には銀座四丁目にkay meの直営店がオープンしている。今回のインタビューは、銀座の直営店で行った。そのスピード感とマーケティングエクセレンスな展開を追ってみよう。
■事業への想い
3.11 東北地方太平洋沖地震。形ある物が儚くも消え去り、その後経済の停滞が続いた。その様を見て、コンサルティングを生業とする毛見は「有形のモノを生み出して、経済の復興の一助となりたい」との思いを強くしたという。
事業としてアパレルを選んだのは、自らが大阪・繊維関係の商家出身であることと、何より自らがリアルターゲットとして「ニーズに応えてくれる服がない。同様な未充足ニーズを抱えている人が少なくないに違いない」という読みからであった。
アパレル業界のトレンドはファストファッションやユニクロに代表される低価格大量生産と、モード系ブランドのような高価格少品種に二極化している。つまり、マイケル・ポーターが「企業戦略の3類型」で指摘した「コストリーダーシップ戦略」と「差別化戦略」である。そこで、毛見は第3の選択肢を取った。「集中戦略」である。ジャージー素材と呼ばれる伸縮性のある素材のみを使用したイタリア製プリント柄の「働く女性のための」ワンピース。そのニッチなドメインに勝負をかけた。
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