35歳商社マンは、転職して芝浦を本丸にした 大企業の看板を下ろした拓哉は通用するのか
ベンチャーに移れるほど腹はくくれていないチキンだけど、そこそこ芽が出てきそうな三分咲きくらいのベンチャーであれば、リスクもそこそこに、うま味を享受できる。
沈みかけの船にも、トタン板の船にも乗る気はさらさらないけど、ここなら丁度いい塩梅かもしれぬと。
前職比ダウン、だけど何だろう、この武者震い
商社から、転職して、ベンチャーの役員をやっているやつらがたくさんいることは知ってましたから、軽い気持ちで、タケシに連絡して興味があることを伝えると、強烈に誘われました。
オフィスとは名ばかりの手狭なマンションでした。彼にとって、平社員の僕の戦闘力は懐疑的だったのかもしれませんが、自分一人では心もとなかったのでしょう。丁度採用強化しようと思ったタイミングで、大企業の看板を背負ってきた僕は、鴨がネギを背負ってやってきたように見えたかもしれません。
前職考慮ということで、年収850万を提示してくれました。比較的高めの年収を提示してくれましたが、前職比ダウンです。スタートアップで、エンジニアではなく、850万という額はかなり高給な部類だそうです。まだ創業したばかりで、資金もさほどなかったはずの彼の台所事情を理解して、承諾しました。
だけど、強がりじゃなく、そのダウンはまったく気になりません。柄にもなく、ここで一旗揚げてやるんだと、『ワンピース』の主人公になったかのような、ワクワクする感覚でした。35歳総合商社の看板を下ろして僕はどこまで通用するのか、武者震いです。